感想置き場

BLとアサシンクリードが好き

『ペルソナ5ロイヤル』感想

 これが製作陣の"答え"ですか……。
 まあこういう感じで来ることは大体予想ついてた。黒幕が初登場した瞬間「あっコイツ怪しいな」と思ったし、人の心を救う研究とか言い出したとき「あっこれ絶対『誰も傷つかない世界でみんな仲良く暮らそうよ』と主張して"幸せな世界"にみんなを閉じこめようとしてくるな!」と思ったよね。カリギュラでも全く同じことしてませんでしたか?別に特定のゲームの名前を挙げなくても「誰も傷つかない世界を作ろうとするラスボスVS痛みは生きている証なんだパンチ」の構図は古今東西でやり尽くされていることなので、ぶっちゃけ「またそれ?」感は否めなかった。誰が何をやっても結局「それでも生きていくしかない」に着地する以外にないのは、「生きている人間が作る生きている人間のためのストーリー」の限界なのかもしれない。 

 でも今回ただの「痛みは生きている証なんだパンチ」ではないなと感じたのは、モルガナが最後に言った「確かにお前の研究で救われた奴もいる、でもこれから成長する奴らの可能性まで奪っちゃいけない」ってところかな。要するに黒幕は「自分が辛いからみんな同じように辛いはずだ」と思っていたわけで、「自分は辛くても頑張りたい」という人の存在は見ていなかった。それに加えて、"味わわない方がよかったはずの不幸な事故"と"何かを掴むために努力する過程で生まれた苦労"をごっちゃにしてしまった。例えば留美さんが強盗に襲われて精神に多大な損害を受けたことを「成長のための試練だった」なんてほざく人間がいたらソイツは最低最悪の人でなしだと私は思う。そういう取り返しのつかない悲劇や何も得るものがなかったような単なる損失の記憶を忘れてしまうことは、確実にその人にとっての救いになるだろう。けれど怪盗団のように"得たもの"がある人間から苦痛の記憶だけ除いたら、連動している"得たもの"の記憶まで失ってしまう(苦痛の記憶だけ除いて、得たものだけ勝ち取れたら完璧だけどそこまで改ざんしたら辻褄が合わなくなる)。つまり丸喜先生の問題は「救いたい」という気持ちの方ではなくて、対象をむやみに拡大し過ぎたことの方だと私は思う。
 まあそんなことが言えるのは結果を見てるからだと思わないでもない。だって双葉のお母さんも真のお父さんも春のお父さんも、生きていた方が絶対幸せだったのにって思ってしまうのはもう仕方のないことだから。怪盗団のみんなが前を向けてるのはジョーカーが奇跡的に目の前に現れてくれたからであって、それがなかったら時間切れバッドエンドのようにみんなが破滅してた未来もあり得たわけだよ。

 世界には立ち上がれる人間ばかりじゃないから、手を差し伸べるべきは"ジョーカーが来なかった人々"の方なんだけど、ここで一番大事なのはやっぱり"自分の意思で"「救われたい」と願っている人かどうかだと思う。救いたいと願っている人間の方にだけ決定権があるのがおかしくて、救いたい人間と救われたい人間、両方の需要が一致して初めて"押し付けでない救い"が完成すると思う。つまり、前述した"取り返しのつかないただの悲劇"と"何かを得るために必要だった苦労"とを分けることができるのは、絶対にそれを"自分で体験した人"のみということ。それが「自分の未来は自分で決める」ということだと私は思う。自分が「こんな記憶忘れたい!救われたい!」と願った結果丸喜先生に縋るのなら、それもまた「自分で選んだ未来」なわけ。ただ怪盗団はそれを選ばなかったっていうだけのことで……。
 私はどちらかというと丸喜先生の言うことがわかる方の人だから、本当に救いが実現するのなら先生の手を取ったかも。ペルソナ5の私はプレイヤーであると同時にジョーカーでもあったから、ジョーカーなら絶対そんな安寧に身を委ねたりしないだろうと思って戦うことを選んだけども。

ここからはロイヤルでの大きな追加要素だった3人のことを語ります。

明智のこと
 私がこのロイヤルをやったのは9割方明智のためと言っても過言ではないくらい私は彼に対して巨大感情を持っています。何を隠そう、私は無印ペルソナ5の本当の1週目で明智の裏切りにまっっっったく気づかなかったほどの"恋は盲目"の体現者です。初めて見たときから「仲間になってくれ!」と切望していたために「仲間として一緒に戦える」という状況に浮かれきり、「今は仲間だよ」という彼の甘言にすっかり乗っていた!パンケーキ発言にもまっっったく気づかなかった!これも認知の歪みの一種ですね。
 それならば本性を現したときに嫌いになったかというと全くそんなことはなく、二面性のある人間が大好きなものでますます愛してしまった。むしろ「俺(ジョーカー)だけに見せる剥き出しの憎悪と悪意、最高!」などと思っていたことを供述します。
 そんな明智の死に際を見ることができなかった無印ペルソナ5……死体を見ていないから確実に死んだという事実が確認できないというやるせなさ……。でもそれがあいつの選択なら仕方がない、最後に自分自身という最大の敵に抗うことを選んだアイツの反逆の心を否定したりしたくない、そう思ったからこそ安易に「幸せになってほしい」だの「救われてほしい」だのとは言いたくなかった(彼自身が犯した罪の重さから言ってもそんな軽い結末許せないという点もあった)。
 そんな折にロイヤルの発表と新情報に映った"明智"の姿……!「アトラスの答えを聞きたい、アイツの"幸せ"って何よ……"救い"って何よ……!」という、恐れ半分期待半分の心境で挑んだわけです。そして見ました、製作陣の"答え"を。
 やっぱり奇跡なんて……起こらなかったよ……夢は……夢のままなんだね……。
 一緒にパレス探索して、セーフールームで雑談して、バトンタッチとか超かっこいいコンビネーションフィニッシュとかやったりして、バトルで俺がヘマしたら「倒れたら殺すぞ!」とか言われて……。明智があんだけカッコつけたのに初陣で敵がエイガオン無効で大笑いしたり、暇なときはダーツなんかやっちゃったりして……こっちがど真ん中撃ったら対抗して全部ど真ん中にしてきて……。そういうなんでもないような"仲間"をお前とやりたくて……。別に仲間でなくてもいい、好敵手でも、殺し合いの相手でも、なんなら刑務所に無期懲役でもいい!生きていてほしかったよおおうわああん!刑務所に面会行くからああ!
  何より泣いたのは明智自身が生きることを願ってないってこと。「誰かに生かされるなんてゴメンだ」とハッキリ言われてしまい、ハナから明智のためだなんて思ってなかったけどこの「生きている明智とまた会いたい」という願いは完全に私の寂しさを埋めるためだけの気持ちなんだと思い知らされた。そのことに気づいた時点でもう"気づかなかった頃の自分"は死んだのだとわかってしまった。これで夢の中を選んだとしても私の願う幸せはどこにもないだろうと理解して、戦うことを選ぶしかなかった。丸喜先生は認知を変えることで人を救おうとしたけれど、逆に言えば認知が「それは嘘だ」と思ってしまったらもう信じることはできないんだよね。
 彼の人生があの時終わることは明智自身の選択の積み重ねの結果で、彼自身が生きたいと願っていない以上、それを変えることは誰にも許されない。前述の通り、救われたいと願う人を救うのは正しい行いだけれど、願わない人に押し付けることは許されない。本当にその人を尊重したいと思うのなら。
 いや本当に明智のためとか微塵も思ってないからね。徹頭徹尾俺のため、俺の夢だから。誰がお前のためになんか動くか!勘違いするんじゃないわよ!

 というか最後の別れくらい言わせてくれてもよくない!?明智のバカ!と心で罵りながらボーッとムービーを見てたんだけど最後の亡霊みたいなのは何!?思わせぶりなことを!人気があるからって人生終えた後も生死をぼやかしたまま後続スピンオフにこき使われる運命だけはやめてよね!EDの「もう二度と会えなくても」のところで号泣した後にそんな匂わされても!

・"かすみ"のこと
 今時ハイレグは無いよデザイナーさん。新体操モチーフなのは後でわかったけどそれを差っ引いてもダサイよ。股間周りを肌にする必要は絶対無かった。回想で出た新体操の服の方が可愛いって!
 私は清楚系の後輩キャラが好きなので制服の外見見たときには「おおっ?」と思った。でもあまりに品行方正でいい人だったので「欠点が無いと愛せないな……」などと捻くれたことも思っていた。ペルソナ覚醒の時に「偽りの栄華」と言っていたので「まさか本当に死んだのはかすみの方でこの人はすみれとか?なーんてね」とか冗談半分で推測してたらホントにそれかい!!(ミステリーあるある:そっくりな人間が出てきたらすり替えを想定しろ)
 彼女が「自分には何にもなくて、かすみは何でも持ってる。自分なんていないほうがいい」と思っていたけど本当は違っていたと気づくコミュが最高だった。自分を見せるということは相手からも何かが返ってくるということであるから、かすみの言った「自分をすみれに見せつけたい」という言葉は「すみれに自分を見てほしい」ということである。価値が無いと思っている相手にそんなことを思うわけがない。すみれが「かすみは私のことこんなにも想ってくれていたんですね」と姉妹の間の絆に気付けた流れが本当に素晴らしかった。
 丸喜先生は確かにすみれを救っていたと私は思う。自分のせいで才能豊かな姉が死んで、残ったのは誰からも望まれない自分だけ……なんて状況、逃げたくなって当たり前。だから私はすみれを先生から助けるときのジョーカーの説教には納得できなかった。重すぎる現実に対して「現実を見ろ」とか「自分と向き合え」とか軽すぎるよジョーカー先輩!そんな軽っ軽の言葉じゃ何も響かねえよ!"あのときの"すみれには逃げ場が必要で、先生がそれを用意した。その逃げ場にいる中でも深層ではうっすら本当のことを理解していた(と私は推測する)。そして時が経ちジョーカーに出会って「このままではいたくない」と思ったから"今"は逃げ場が必要なくなったというだけのことで、過去の先生の救いが無意味だったわけじゃないと思う。

・丸喜先生のこと
 もうここまででだいぶ語ったけど、先生は優しい人だったんだよ。カウンセラーの限界を感じて仕事は仕事と割り切るのではなくもっと救う方法を探しちゃうくらい優しい。先生のやり方で本当に救われた人も絶対いる!私がジョーカーじゃなかったら絶対戦うとか無理だった。でも最後倒したと思ったらいきなり古風すぎる殴り合いが始まって「今時これ!?」って声出た。急に古めの少年漫画始まった!?
 先生を死なせなかったのは、明智が死んでるから先生まで死なせたら二連続で「死んで終わり」展開になっちゃうし、明智と先生では"人殺しの壁"という巨大な障壁が立ち塞がってるから先生の方はまだ生きて償う余地はあるということなんだろうか?まあ足立さんは殺しても生きて償ってるしそこは関係ないか。

・ゲーム全体のこと
 コミュ全部終わんねえよ!パラメーター上げがあるとやっぱ無理。パレス攻略可能な限り1日で済ましたけどそれでも間に合わない。獅童パレスの前、仲間が誰一人出てこない空白の午前中が何日も続くのはマジで何なの!?何をしろと!?その時間あれば絶対終わったって。完全版のくせに意地でも二週目をやらせたいという熱意が見える。
 これは無印からずっと言われてるみたいだけど、制作がガチガチに決めた枠組みの中から全然出られなくて拘束時間が長い!自由に行動できる時間が少ない!「あっち先に調べよ〜」と行こうとしても「そっちじゃねえんじゃねえか?」とか言われる。それを自分で探すのがゲームでしょうが!不評だった「今日はもう寝ようぜ」が無くなったのはその辺制作も気にしたからなのかもしれないけどでもまだ全然ギチギチだよ。敷かれたレールの上を一番歩かされてるのはプレイヤーだよ。
 BGMは相変わらず素晴らしいの一言。特に良かったのは丸喜先生との最終決戦に向かうときの曲!直前に明智の真実を聞かされて号泣してなお戦うことを選んだ心境にぴったりの、熱いだけでも悲しいだけでもなく静かにみなぎる決意!
 戦闘もだいたい文句なし。テンポの良さに関しては今時のターン制ゲームとして最高峰だと思う。無印では泥仕合になりがちだった弱点無しの敵に対しては、テクニカルやバトンタッチで攻めるという攻略法が新しく確立したのも良かった。ただ雑魚戦は良くてもボス戦(特にラスト)はスタイリッシュ演出に時間を割く分高難易度でいちいち死に戻りしてたら一生終わらない長さになっているのが難点かも。
 とにかく長いよこのゲームは。無印ですでに何度も見たシーンは全部早送りしたけどそれでも死ぬほど長い。どうせコミュ以外の選択肢にたいした意味なんて無いんだから早送りじゃなくてシーン丸ごとスキップしたいよ。無印ですら長かったのに今回でさらに延びたからね。プレイ時間のほとんどは操作じゃなくて映像と会話を見てたね。とはいえ世界観解説や心理描写に避ける尺は多いほうがいいので、とにかくスキップ機能をもっとまともにしてもらいたい。どうせこれで完全版だからもう改善とかしないと思うけど。というかパレスが七つの大罪モチーフなのは薄々知ってたけど、8つ目をプラスするにしても悲嘆が一番最後というのも不思議だから、最初からペルソナ4ゴールデンのように完全版を作る気でいたんだと思う。無印のEDの歌詞なんて内容がロイヤルで追加されたストーリーほぼまんまだし。制作の思惑にまんまと乗せられてプレイした私が言うことでもないが、最初から決まってたなら最初から完全版出せよ!金か?金が足りんかったのかな?
 こんな感じで不満は挙げればいっぱい挙げられるけれどそれ以上に楽しかったり泣ける要素が詰まってるから結局大好きなゲームなんだよな……。そうじゃなきゃ4周もしてないし……。そしてコミュ全埋めのためにまた周回しようとしてるし……。でももうスキップ地獄は当分やりたくないからしばらく期間は空ける。