感想置き場

BLとアサシンクリードが好き

『SUPERNATURAL』Season9~10 感想

-Season9-
 人間化したキャスが最初に出会った天使の人が「その器に私も入ってあなたと1つになる」とか言ってたけどもうほぼ二輪挿しで笑う。ジミーの身体、穴としか見られてなくて可哀想。その人「私が守ってあげる。置いていくならあなたの居場所をバラして同志に殺させてやる」とかすごいヤンデレだったけど、キャスって本人は普通に接してるつもりなのにこういう風に勝手に燃えるような恋情抱かれて最終的に刺されそうなキャラ第一位(このドラマの中で)かもしれない。
 クラウリ―って相手の嫌がるところを的確に突いてきて本当にやだわ。私は悪魔にとって一番必要なのは相手の弱点を見抜く能力だと思ってる。そんな生粋の悪魔が中途半端に人間性を取り戻すって本人にとって悪夢でしかない。しかし暗闇の中に取り残されて目を伏せる仕草だけで、それまでのクラウリーとは何かが違うことを表現するのがすごい。
 "エゼキエル"のためにキャスをバンカーから追い出したけど、たとえ本当にキャスが「迷惑かけたくない」と言ったとしても、いつものディーンなら意地でも一緒に戦うって言って引き留めてるはず。でもサムの命がエゼキエル次第な時点で彼の言うことを聞く以外にない。しかし瀕死のサムの命を天使の憑依によって留めたことを、サムの方には教えたらまた死にたがるから言えなかったのだとしても、キャスにまで隠したのはおかしくないか?それだとあの時は単に「お前が狙われてるからここにいさせられない」と言っただけということ?結構酷いな。
 ディーンが少年の頃に厚生施設で暮らしたことがあると判明する回で、いろいろと制約はあるけど施設に居れば愛情を与えてくれる保護者とちゃんとした生活ができるのに、車にサムが乗ってるのを見て少年ディーンが帰ることを決めるシーンに"""愛"""が爆裂に詰まっててすごかった。微笑みひとつで完璧に表現できている。現代のサムが「どうして戻ったの?」って聞くけど、そんなんサムがいるからだよ!サムにディーンがいるようにディーンにはサムがいるんだよ!
 しかしそういうエピソードを見てしまった後だと、ディーンもサムもキャスやケビンに「お前も家族だからお前のためなら死ねる」と言うけど実際にそうしたことは無いからホントか?と思ってしまう。そこに使っちゃったらお互いに使うぶんが無くなってしまうじゃないか。
 ガドリエル拷問時にあるディーンとキャスの「俺たちは間抜けコンビってこと?」「お人好しという言葉の方が好ましい」って会話が良い。しかし人間が堕落したり神がいなくなったのまでガドリエルのせいにされてて笑う。きっかけはそれかもしれないけど人間が堕ちたのは流石に人間のせいだろ。最終戦争とかもルシファーのせいだし、元はと言えば神が悪の根源としてのルシファーを望んだからそうなったんだし。
 クラウリ―、掛け金全乗せのタイミングが完璧すぎる。ディーンにとってサムの命以上に価値あるものは無いから、それが台の上に出された時点ですかさず「私を自由にしろ」という最大限の要望を出す判断の速さ。
 カインのエピソード聖書と全然違って草。嫉妬が動機だったのにアベルの代わりに地獄へ行った弟想いになってて草。そうすることでディーンと同じ立場にするためだろうけど。聖書ではカインは追放されるけど、神が「私がすでに罰したのだから何人たりとも今後私刑に走ることは許されない」と厳命して、カインは生き残り多くの子孫を残したって話がめっちゃ好きなんで残念ではある。いいけどね。「どうしようもない奴でも神は本当の意味では見限ったりはしない」っていうエピソードだから好き。しかしカイン談の「アベルは神と話したんじゃなくルシファーと話した(talking)んだ」って英語で言ってるのに、吹き替えで「ルシファーに愛された」って言ってて目玉飛び出た。でもその後の「ルシファーは俺の弟をペットにしようとした」は英語もまんまでさらに驚愕。あいつほんと自分と同じ立場の奴好きだよな。でもカインが「弟は天国に、自分は地獄に」って願った時のルシファーどんな気持ちだったんだろう。「理想の兄の姿だ!」って喜んだかもしれないけど、ミカエルはそんなこと言ってくれなさそうだから複雑そう。それにしても「弟を天国に送りたければてめえ自身で殺しな!」って性格悪すぎて笑う。自分とミカエルに重ね合わせて絶頂してそう。
 サムちゃんがガドリエル追跡のために自分が死ぬことになっても良いとでも思ってそうな態度でいる理由が、まだ自分に価値が無いと思って犠牲になることで綺麗になろうとしていたからで「まだそれかよ」と思ったんだけど、そういえばS8の儀式達成できなかったからその心理が継続してたのか。だから災厄の元で役立たずの自分は死ぬべきだと……。一つでも正しいことをして死にたいと……。
 ガドリエルを憑依させた件でまたしても仲違いした二人が久しぶりに会って完全に仲直りする流れだと思ってたらサムさんが「もう元には戻れない」とか言い出して驚愕した。おまけに「兄弟関係は抜きにする」とか、お前らから兄弟取るって、兄弟だからこうなんだし兄弟じゃないお前らなんてお前らじゃないよ!?「目指す方向が変わってる気がする」ってディーンはブレてないだろ!いつだって一番に考えてるのはサムを死なせないことだけで、世界を救うのは二番手だろ!S5の最後はディーンがサムの意思を尊重しようと最大限に努力した結果で、それでも檻の中から出す方法を探してたんだし……。
 わりと忘れてたけどサムちゃんもしかしてS5の頃言ってた対等云々を気にしてる?弟だと思われるからいつまでも守るべきものとして見られるみたいな?一人前として、ハンターの相棒として頼りにしてほしい的な?ディーンにとって家族認定は最大の賛辞だけどサムにとっては庇護対象として見られて不服ってこと?いつもの言葉と態度だけ見れば単に鬱陶しがってるとしか見えないから、ディーンが自分の価値をどん底に見積もるのもわかるわ。だって「兄弟抜きで」なんてディーンからしたら死刑宣告みたいなものよ。サムまさかそれに気が付いてないのか?逆にすごい。「兄弟抜きで」のシーンを英語字幕で見た感じ、「今は家族じゃないって?」というディーンの問いには流石のサムでも言い淀んでた。でも「僕が言いたいのは家族だからで何でも解決した気になるんじゃなくて、仕事の相手として見てほしい」みたいな感じなのは間違いない。「ディーンがそれよりも兄弟でいることを期待するなら一緒にはいられない」みたいな。でも少なくとも試練を中断したときはお前も納得してたのに、そのことでディーンを非難するのはおかしいだろ。しかもその後「僕の言ったこと引きずってる?」とか「正直に言っただけだから」とか追い打ちかけてて鬼か?
 それだけでは飽き足らず、「サムを救うのはサムのためじゃなくディーンのため」疑惑、もはや九割方わかってたことだけどついにサムが言葉にしてしまった。「僕なら助けない」って鬼か?
 クラウリー「お前らのDNAの依存症になって苦しみと重荷を背負った」って何?中途半端に人間の血が混ざったせいで依存症になった?から定期的に人間の血を取らないとおかしくなる?もっと人間性と悪魔の性質との間で葛藤するシーンが見たいとか思ってたら一気に壊れ始めてびっくりした。しかも何その距離感。酔っぱらって電話してくるのはもう友達なのよ。S8終盤までの敵対ぶりが遠い昔のようだ。
 クラウリーがやけに二人に対してすり寄ってくるのはむず痒いんだか不気味なんだか形容しがたい感覚だったけど、元始の剣と同調するディーンの様子を冷静に観察する表情には「やっぱこうでないと!」と思った。いつもの容赦の無さがあるからこそのギャップ萌えだから。
 サムから出た後に捕まったガドリエルがディーンを散々に罵る内容「一人になるのが怖いガキ」はサム自身がほとんど同じこと言ってたし、「父親の愛情が足らなかったからか?」ってガドリエルがダッドのことまで知るわけないんだからこれがサムの考えってのはたぶん本当だと思う。そんなことを弟に冷静に分析されてるなんて嫌すぎる。
 クラウリーが息子を守るために兄弟を売ることにしたのかと思ったら「ポキプシー」って言った時の衝撃はすごかった。アバドンを倒さなきゃいけないとはいえ、友達か?
 テッサ(=死神)が天使の一員みたいになってたけどそんな設定だった?エイプリルもなんか「この子もすぐに同意してくれた」とか憑依みたいなこと言ってたけど死神って憑依だっけ?
 メタトロンはクソだけど「最後の日にカスティエルが優先するのは自身とそこの兄弟だ」は結構的を射てる。仲間を助けたい気持ちも本当だけど、絶対にどちらかを選ばなければいけないとしたら……。
 カスティエル、やっぱりディーンを選んだ。ディーンを殺したら今までの何もかもを踏みにじることになってしまうから当然だと思う。サムと飛躍的に仲良くなっても結局カスティエルにとって絶対的な存在はディーンなんだなあ。
 メタトロン嫌いだわー。こういう俯瞰気取ってその実名誉に飢えてて自己評価だけが異常に高い奴嫌いだわー。神に成り代わろうとするのも腹立つ。愛が無いじゃん。みんな神にいろんな不満をもってるけど、それは結局神を愛してるからこそ出るものなのにコイツは誰のことも愛してない。人への憐れみとか愛のためじゃなくて自分が目立つために人を助けるパフォーマンスに反吐が出るわ。キリスト教の憐れみの概念(相手を見下す哀れみではなくてただ慈しむこと)が好きだからムカつく。
 ディーンがメタトロンに刺された時に「俺が死んでも平気じゃ?」にサムが「嘘だよ」って返すんもう私はわけがわからなかった。ディーンが「自分でも死ぬべきだと思ってる」のはあの時のサムと完全に同じなのにサムは抗っている。じゃあそもそもなんで「僕なら助けない」なんて言ったのか?嘘だよって何?なんであの場で嘘つく必要があったの?ただの強がり?いざ現実に目の前にしたらそうじゃなかったと気が付いた?(S10でチャーリーにこの時のことを話してたけど、「ディーンのやり方が頭にきてつい傷つける言葉を言っただけ」だって??マジかコイツ。それが本当なら的確にえぐる言葉を選ぶ能力がありすぎる。)ディーンの「どんな結果になっても(たぶん俺がどうなってもの意味)メタトロンを殺す」に「わかってる」と返してたのに、本当にディーンが死んだら悪魔と契約して戻そうとしてて「結局戻すんじゃねーか!お前いい加減にしろよ!?」と半笑いになってしまった。ディーンが説明しないとか一人で行くとか言うようになった理由は刻印もあるけど、お前が「家族と思うな」とか言ったのも絶対入ってるからね!?
 そしてクラウリーがいつのまにかディーンにかなり懐いていてちょっと困惑した。血を入れたのはサムなのに、助けたり呼ばれたりするのはいつもディーンの方だし。ディーン好かれるようなことなんかしたっけ?クラウリー初登場回のサムはルシファー復活の責やら悪魔の血に飢えてるやらで、悪魔と見れば誰にでも噛みついて隙あらば殺そうとする坊やだったから嫌うのはわかるけど今も?(見返してみたら、ディーンはカインの剣の辺りから何だかんだ「クラウリーなら人質は殺さないだろう」とか言ったり、「剣さえ手に入ればクラウリーは用済みだから殺していいよね?」と言うサムに対して妙な間を空けたりしててちょっと情が移ってた?みたいだから、サムにはそういう傾向が全く無いから嫌われてるのかもしれない。)サミーが彼に人間性を取り戻させたんだから出来ればディーンとだけでなくサミーとだけに発生する関係も欲しかったけど、サミーからクラウリーへの態度が頑なすぎて取り付く島が無かった。ディーンがクラウリーに甘いのはやっぱりサム無しの時に一緒にいてくれたからなのか?でも呼び出すときはいっつもサム無しの時だけで、サムと合流すると速攻で捨てられるから都合のいい男感がすごい(これはキャスもだけど)。
 最終的にかなりガドリエルが好きになった。ガタイが良くて寡黙で実直、そして過去の所業に苦悩する姿が良いし、クソ上司でも一度誓ったら身を挺して庇う忠誠心も、敵に対してでも最低限のモラルをもつべきだと思ってるのも良いそう言ったから」じゃなくて「自力で戦えないものを守る」というところまで明言した天使は初めてだし。罪人ではなく名誉ある者として皆に覚えられたいという願いを最後まで抱き続けたこともかなり効いた。死ぬ前の英語台詞は全シーズン通しても指折りの名台詞だと思う。 
 
 クラウリーが人間の血を得て急に良い人になるのではなく、今までの彼らしさを残したままで少しの表情や態度で彼の中のゆらぎを表現するマーク・シェパードの演技が素晴らしかった。状況を裏で掌握する悪魔としての振る舞いと、仲間が欲しいという人間としての振る舞いの配合が絶妙だったからこそ「良心の芽生え」なんて安っぽくなりがちな展開でもクールに纏まっていた。「クラウリーは知っていても言わないし知らなくても言わない」と特典でマークが言っていたけどそこが良い所だと思う。常に策略を巡らせて自分が優位に立てる瞬間を見逃さない所。
 特典を見て初めてわかったんだけど、今期のテーマはグレーゾーンなのか。人間性を獲得したクラウリーと非人間的になったディーンが近い位置に立ったということだったのか。サムは最初からグレーの領域にいたキャラだし、キャスも天界と人間と自分が犯した罪の間で常に迷ってるキャラだし。

「何が正しくて何が間違ってるか」が今期のテーマなら、メタトロンの言い草から彼の性根が腐っているとガドリエルが感じ取ることが出来たということが、規則や命令が無くとも「本当に正しいこと」を直感的に理解することは可能だということを示しているのではないか。それはいつでもわかるわけではないし、善悪の基準は色々あって一概には言えないが、極限状態の時最後に信じるべきなのは「自分の内なる声」ということかもしれない。そういえばキャスが軍隊よりもディーンを取ったあの場面も「大義よりも一人を取る」行いという点でディーンの選択と同じだ(タイタニックの時と石板の時とこれでもう三回目だから気づかなかった)。ディーンを罰することが「正しい行いだ」とわざわざハンナに言わせていることからも、それでもキャスの内なる声は「それは違う」と叫んでいるということではないだろうか。それが大多数の人にとっては罪にしか見えないものだったとしても、究極的には自分にとっての最善を探すしかないということではないか。

・ディーンとサムについて全体的な話
 ディーンはサムがいない時、空いた相棒の位置にすぐ別の誰かを座らせるように見えるが、なぜそれが出来るかと言えば誰がそこに座ろうがサム以上に大切な存在にはならないからだ。彼には「サムかそれ以外か」しかない。さらに言えばサムがその席に座り続けてくれるという期待もしていない。サム自身が選んでそこにいてくれるなら最高の幸福だけど、いないならしかたないと思っている。ディーンがサムに期待しないのは何と言っても前科があるからで、それが「昔の過ちだった」で済まされないのは、紛れもなくサムの本心がそうさせたのだと理解しているから。ディーンが「他の何を捨ててでもここにいてくれ」と言えないのは、サムが自分たち家族より普通の生活を優先したあの時のことがいつかまた起こるという予感を持ち続けているから(サムはガドリエルが憑依して間もない頃に「今まで生きてきた中で感じたことがないくらい今が幸せ」と言っているけど、あれだけ普通の生活に固執してるのを見てきたんだから「嘘こけ」と言いたくなる気持ちもわかる)。
 ディーンはサムにとっての一番が自分でなくても構わない(たとえ心の底では望んでいたとしても)けど、サムはディーンにとっての一番は自分でないと嫌なのが基本の形なのかもしれない。ただ問題の根本はディーンの「心の底では望んでいる」の部分な気がする。素直に弟の幸せを祝福するだけの健全な距離感だったなら何の問題も無かったのに……。願いが叶わなくてもそういうものだとディーンが諦められるのは、そうするより他になかったからで、期待と絶望の循環を繰り返すのは苦痛だからだんだんと諦めが身についていく。
 二人の関係は複雑だけど、アメリアの件でディーンが「俺よりも女を取った!」と激高してたのは誇張無しの事実で、その後「お前は幸せになってもいい」とか殊勝なことを言いながら、サムが最終的に彼女より自分を選んだことに内心では喜んでいる部分があるのは間違いない。
 特典も含めて色々見返してわかったんだけど、サムは世界よりも優先されてしまうこの執着の根源が「兄弟」にあると考えたから、自分たちが変わるためにはそこを見直さないといけないと判断したということらしい。それ自体は筋が通ってると思うし、サムを救ったせいで未だに世界中で悪魔による犠牲が出るままになっていることも、サムの意志を無視して救うのが自分勝手というのもわかるけど、結局サムの方もディーンが死ぬ時に有言実行できなかったからその問題は解決していない。サムとしてそれはいいのか?
 サムは兄弟として見なければ二人の歪みは解決できると思っているようだけど、ディーンにとっては兄弟がいないということは自分が世界を守るための単なる機械になるということと同義。なぜならディーンの人間的な部分は家族への感情が担っているから。私としては「所詮一人間に過ぎない者が家族を大事にするのはそんなに罪か?」とどうしても思ってしまう。本物の英雄になるためには自分の家族すら単なる物の数として扱えなければならないってどこの切嗣?英雄である前に人間なんだし、自分の家族だけはノーカンと開き直れるぐらいの方が精神的に健全じゃないんだろうか?

-Season10-

 サムが悪魔ディーンを捕まえるのに手錠を持参していたが、弟が兄に手錠をかけて引き回す絵面を想像すると倒錯性が酷すぎて笑える。しかしサム、ディーンが「当然の報いだ」と言ってるのに気にしないとか言っててお前前回までは……この野郎……。
 前期ですっかりディーンに懐いたのに結局振られたクラウリーがディーンとの仲良さげな写真を持っててびっくり仰天よ。なんでそんな悲しそうな顔で見てんの?揶揄とかじゃなく彼氏と別れた人の反応だよそれは。いつの間にそんなディーン好きになったの?やっぱ友達欲しかったのかな。二人で地獄を支配して毎日パーティみたいなの本気でやりたかったの?配下の悪魔にディーンのことを日本語字幕で「愛人」って言われてたから英語字幕も見たら「boy toy」でそのまんま「若い男の愛人」だった。確かにそうとしか見えない。わがまま放題されて形だけは叱るんだけど、強制力は全く無くて振り回されてるだけなところとかそのまんまだし。部下からしたら上司が人間ごときに監禁されて自分も人間になりかけたあげく血依存症になり、次はアバドンにも捕まって長く音信不通になり、やっと玉座に帰ってきたと思ったら今度は人間一匹にどつかれて反撃できないほどの威厳の無さなのは仕える対象として不安だろう。
 ディーンが今まで何をしても捨てられなかったサムへの執着を、悪魔になることで初めて捨てられたんだとしたら、2割くらいは喜ぶべきなのかもしれない。でも悪魔期結構すぐ終わったから期待してたぶん肩透かしかも。悪魔の時のディーンの発言をサムは「本当のディーンじゃなかった」とは言うけど、「お前が生まれなければ母さんは生きてた」は一度くらい思ったことはありそう。女とヤッてるのはいつものことだし(礼儀はほとんど捨ててたけど合意だったし)、カラオケ好きが増幅したのと暴力衝動を抑えなくなったぐらいで、そこまで壊れた感じは無かったな。一番の違いはサムを殺すことに躊躇が無いことぐらいだけど、でもそこがディーンにとって一番重要なのか。メタ的に考えると、ここで無茶苦茶やらせちゃうと元に戻った時に取り返すのにも限度があるからさせられなかったのかも。
 二人と離れてハンナと行動するカスティエルが「混沌から生まれるものは悪いものばかりじゃない(愛とか希望とか)」と言ってたけど、天使は器に入って初めて人間のような感情や感覚を得られる以上、「それらは人間のものであって天使のためのものじゃない」というハンナの意見は一理あるかもと思った。
 ロウィーナの登場でクラウリーのガチでかわいそうエピソードが増えてきた。例の「俺は愛されたい」の源泉ってここか。でも親子関係って人類において一番普遍的な呪いかもしれない。クラウリーって名乗っても頑なにファーガスって呼び続けるとことか親の一番嫌なところ出てる。たとえ何百年経ってて忘れたと思ってても、目の前に立たれると一瞬で親と子の力関係が固定される感じ。子はどんなに憎んでてもどこかで「もしかしたら」という期待を抱いてしまうものだけど、毒親の方は何が問題なのか永久に理解しないという現実を思い知るだけだから、極力会話なんてしない方がいい。喋れば喋るほどクラウリーの願望が漏れてきちゃってる。「数百年も放っといただろ」は「そばにいてほしかった」の意味なのよ。
 クラウリーがディーンから要件も無しに「今すぐ会いに来い」って言われただけですぐ飛んでっちゃうのもう好きじゃん。心なしか嬉しそう。「飲み会の誘いかと思ったら……」があながち冗談にも聞こえなくなってきた。二週目を見返してみてわかったけど、やっぱ地獄に信頼できる人がいないから本気でディーンを相棒にしたかったのに、悪魔ディーンがあまりに言うこと聞かないんで泣く泣く諦めたんだ。S4やS5のときはおじさんキラーだったのにすっかりディーンに骨抜きになっちゃって……。
 しかし母ちゃんの言いなりになるキングなんて嫌すぎる。統治者とか名乗って恥ずかしくないのか。暴君だとしても自分の価値観に沿ってやるならこんなんより何百倍もマシだわ。アバドンと争ってる時は契約の悪魔としての誇りがありそうな雰囲気だったからかっこよかったのにどうしちゃったの!?と思った。母ちゃんと対峙してる時のクラウリー完全に顔が死んでる。いつもの軽さと上品さと毒気がさっぱり見当たらない。
 ディーンがカインを倒した後に剣を渡すと思わせておいて渡さない所、何度見てもクラウリーかわいそうすぎるいろいろ含みがあるとはいえ「ディーンに生きて帰ってきてほしい」って気持ちは紛れもなくあっただろうにかわいそ!これは過去の行いが悪いんだけど「ウィンチェスターはどうせ裏切る」と母親に吹き込まれた後で、それでも信じたいと思う気持ちがあったから来てくれたんだろうに……かわいそ!いやディーンの方は終始「お前は仲間じゃない」と表明してたんだから、クラウリーの方が勝手に期待してただけなんだけど!なんで当のディーンよりクラウリーよりキャスの方が悲しそうな顔してんだ?良いやつか?
 その後母親にディーンを殺せと言われたクラウリーとディーンが穏やかに話してる図というか、クラウリーがディーンに心理的に寄りかかってると言ってもいい状況だけでも感動するのに、ディーンが言う「血縁だけが家族じゃない」の重みで泣いてしまう。「家族はお前が何もできなくても気にしてくれる。良い時も悪い時も支えてくれる。時に傷ついても。それが家族だ」が明言すぎる。それをずっと身をもって実践してきたディーンだからこそ尋常じゃない説得力がある。そう言いながら思い浮かべてるのがサムやボビーやキャスのことだと思うとほんとに泣ける。しかし「昔のクラウリーなら地獄の猟犬や悪魔を山ほど引き連れてきたのに、今は戦わずに話し合おうとしてる」ってほんと、ほんの2シーズン前なのにその頃が遥か昔のことに思える。でもロウィーナを生かしておく理由があるって本当に「家族だから」だけだったのか。意外だ(見返したら「俺が丸くなったっていう母さんが正しいんじゃないかと思ったから」とも言ってた)。
 メタトロンを天界から連れ出す回はボビーの久しぶりの登場だけでも十分嬉しいのに、ディーンが自分の命を諦めてると聞いてすぐさま「諦めない」って選択が取れるのも泣ける。その前にキャスが同じく諦めないって言うのも泣ける。
 サムとキャスが組むと和むけど、穏やかそうな顔してブチ切れたら何してくるかわからない怖さがある。この二人の方が性格的には近いから喧嘩もせずに堅実にやれる気がするけど、喧嘩しないってのは互いに対する情熱も薄いってことだから、ディーンに対するみたいには2人ともならない。似た者同士よりも全く違う存在の方が惹かれる度合いは高いから。結局こいつらは三人でいるのが最良の状態ってことになってしまう。
 クラウリーが母ちゃんよりウィンチェスターを選んでくれて(本人は「俺を選んだだけ」って言ってるけどね)本当に良かった……!ヒヤヒヤしたわ!ロウィーナのシーン長くてずっと不快だったけど今までの忍耐が報われた……!「俺を生んだかもしれないが、母親じゃなかった」にディーンの言葉が響いてることが含まれてて泣ける。さらにボビーからサムへの手紙なんてこんなの泣くなって言う方が無理。ありがとう……。「ディーンは時々頑固だが、わかってくれる」もすごいけど、色々前科のあるサムに対して「お前が何を選んでも正しい道だと信じてる。お前は善い人間だ。誇りに思う」って言い切れるのがすごすぎる。二人を心から信じてくれてるのが全ての文面から伝わってくる。「血縁だけが家族じゃない」の体現者。
 呪われし者の本の回でのチャーリーとサムの会話メモ「①ディーンと行動し始めた頃は、いつも『この仕事で最後にして法律の勉強に戻るんだ』って考えてた。それなのにジェスを失ってからもずっと『もう一度だけ』『もう一度だけ』と言い続けてこうなってた。②でも今はこれが自分の人生だと満足してる③でも兄貴無しではこの仕事は続けられないよ」これらを総合すると、兄貴込みの人生に満足してるけど、兄貴が死んだら……死んだら……何?人生の目標を見失う?「狩りをする人生には兄貴がいないと狂ってしまう→他の女性と一緒になるなら狩りも一緒に辞める」ってことなの?兄貴と狩りは常にセットだから、兄貴と狩りor普通の生活ってこと(でもそれだと「生活は違っても狩りは一緒に」の説明が付かないな)?
 S9の最後でキャスが「一人の天使で居たい」と言ったけど、メタトロンの言う通り今のキャスはどっちつかずだ。地上に自由を求める天使たちを天国に連れ帰る任務に協力しているが、前はカスティエルこそがその「自由を選んだ」筆頭だったはずだ。その彼が説得するのは「お前が言うな」と思われても仕方ない。今もそれと並行してウィンチェスターに協力している。結局キャスは何がしたいのか?というのは当然の疑問。別に必ずどちらかを捨てなければいけないことも無いと思うが、キャスはメタトロンの言葉に明らかに動揺して、言い返すことも出来てなかった。
 呪いの本を焼けたということにして隠していたうえにディーンに内緒でロウィーナに協力を仰ぐという驚きの行動にサムが出るが、なり振りかまわない時のサムってディーンより遥かに手が付けられない。S9のドライっぷりは何だったんだ。いやでもS3の時もこんな感じだったわ。自分が死ぬときはあっさりしてるのにディーンがいざ死ぬとなるとこうなるのか。サムがロウィーナのことを言わないのは、止められることが目に見えているからなのはわかる。ディーンの中ではサム>>>大義>>>自分で、サムの中でもディーン>>>大義>>>自分。同じはずなのに何でこんなに嚙み合わないのか?答えは二人ともが「自分には救われる価値なんてない」と思っているから。
 チャーリーとキャスとサムが順に「ディーンのために」って唱えるのがそういう秘密組織みたいで笑う。ロウィーナも言えよみたいに目配せするのも笑う。本人が死んでいいと言ってても死なせたくない、つまり「救うのは自分のため」って過去にサムがディーンに言った言葉がそのまま返ってきてて皮肉だ。
 チャーリー死んだの普通に悲しい。ディーンが怒るのはもっともすぎて何も言えない。「お前が死ぬべきだった」という言葉も弟命のディーンらしくない言葉だけど、危険を冒させた側が代償も払わずのうのうとと生きてるのはおかしいからごもっともと思う。ウェルテルの箱回の「ディーンの命を救うために無関係の人間を何人殺すの?」という問いかけは正しい。今期今までで一番暗いかも?
 S10のテーマってもしかして家族?しかも出てくるのは割とクソ家族率が高くて「こんなのに比べれば僕とディーンはかなりマシ」みたいな方向に持ってこうとしてる?そういえば天使も名目上は家族だったな。今回は珍しく敵が人間だけどスタイン家も家族だな。自分が独りにならないために相手の意志を無視して救い合うサムとディーンは、果たして「辛いときに支え合う家族」と言えるのか?
 カイン殺しのときに期待するだけバカだったとわかったはずなのにディーンの電話1つで来てくれるってクラウリーどんだけディーン好きなん?「善い行いをすればもう一度何かを感じられるかもしれないと」!?何かって何!?それは感じられたんですか!?ただ、サムの言う通り今までの数百年にやってきたあらゆる悪事がたかが数年の善行で帳消しにはならないと言われたら確かにその通り。クラウリーが久しぶりに赤い眼を見せて「本来の自分を思い出した」ってのは、殺されかけたわけだしそれなりに真実味があったんだけど、それでもサムを殺さないんだ?殺さない理由ある?
 刻印がディーンを生かし続けるせいで何世紀と生きることになった場合、サムたちはディーンより先に死ぬのでその堕ちた姿を見続けなくて済む。しかしキャスだけは天使なので、たとえ何世紀経とうがディーンを見続けることになる。その発想は無かった。見ないという選択肢は存在しないらしい。
 クラウリー、殺されかけたのに言葉でお願いするだけで協力してくれるなんて優しすぎか?だって命を差し出せとか拷問させろとか大切なものを殺せとかに比べたら、表面上の言葉なんて一瞬我慢すればいいだけだからいくらでも言えるよ。「本来の自分」はどうした?しかしキャスが困ってクラウリーに助け求めるのも驚きだけど、過去の事を考えたらあり得る選択肢か……。でもS6では天使として一方的に命令するだけの関係だったのに……変わったなあ。
 最終話で次シーズンの設定唐突に生やしてきて笑う。ダークネスって語感が急に遊戯王
 ディーンを隔離空間に幽閉するだけじゃサムが探しに来てしまうから、サムにも同時に死んでもらわなきゃいけないってこと!?どっちかが死んだら残された方が無茶するっていう循環だから、同時に死ねば解決じゃん!とは薄々思ったことはある(しかしサムがその気になれば異空間にまで来ると思われてるの地味に評価高くて笑う)。
 オスカーの登場によってクラウリー可哀想ポイントが最高値を記録した。母親が「誰も愛せない」なら自分が悪いんじゃなかったことになるけど、「俺意外に愛せた者がいた」なら自分じゃダメだったってことになる。こんなに酷いことあっていいのか?キャスなんか「ロウィーナの愛する者」で真っ先にクラウリーを思いつくくらいにまともなんだぞ。本当の地獄ってこれ?今のところロウィーナを好きになれるところが一個も無い。
 サムが自分を含めて「善い人間だ」と言い切れる日が来たのは喜ばしいことなのに、状況が悪すぎて全然喜べる空気じゃない。ディーンに滅多打ちにされて「僕は絶対に言わない」って何かと思ったら「ディーンの本質が良いものじゃないなんて」!?「いつか戻れる日が来たらこれが道しるべになる。きっと思い出せる。何が善か。何が愛か」なんかこれ聞いた瞬間もうサムに対する今までの些細な不満とかどうでもよくなった。自分が殺されるって時に最後までディーンの心配して……信じてくれてる。ディーンが言ってた「たとえ傷ついても、いつも支えてくれる」まさにその通りの姿じゃないか?
 私は実の所、S9までは2人の関係に対してそこまで深刻には思ってなかった。でもS10が終始じっとりと纏わりつく闇みたいな空気だったせいで「いつのまにか戻れないほどの深みに嵌ってしまっていた」ことに気が付いたような感じ。今までそんな風に感じなかったのはサムがけっこう平然としてたからで、サムがおかしくなるとこの二人はもう行くところまで行ってしまうことがわかった。何というか、互いの鎖を引っ張り合って縛り合ってる状態?サムの方も世界や相手のためじゃなく自分のためにディーンを救おうとしてることが確定してしまったから、それも愛……の一種なんだろうけど、純粋な気持ちとは言えなくなってしまったなとか。サムがクレアに「死は永遠の別れじゃない」と言ってたけど、それも場合によっては呪縛と言えるんじゃないだろうか。黄泉返りできたり天界の魂と交信できたり天国でも魂同士で会話出来たりする世界だと、完全な無にはなれないから完全な開放も無いってことで……。もし死が永遠の別れだったなら、サムとディーンの関係は少なくともこんな風に拗れてはいなかっただろう。戻す手段があるからこそ未練を断ち切れない。

  今期のテーマも前期に引き続き「何が正しくて何が間違ってるか」だとするなら、サムディンの根本は「家族」にあるけど、他のろくでもない血縁関係の例(ロウィーナとクラウリー等)を見せることで「家族は血縁だけじゃない」に繋げた(これ自体はアダムの時点で示されてたし、ボビーやらキャスやらを家族認定してる時点で割と今更な気がする)。そして前期では非情なことを言っていたサムも結局「家族」をやめることはできなかったし、またしてもディーンは世界よりも弟を取った。「互いを救うために大勢の人を犠牲にするのは正しいのか?」という問いを二シーズン通して続けてきたわけだけど、ディーンがサムを殺さなきゃいけないという時に家族の写真を見て「これが正しいのか?本当に?」と自らに問いかけて導き出した結論が「違う」だとしたら、それが真理ということかもしれない。