感想置き場

BLとアサシンクリードが好き

『SUPERNATURAL』Season13~15 感想

-Season13-

 一話二話が文句なしに面白い。見たいもの全部見せてくれた。ジャック周りも面白いけど、特にミカエルとルシファーの邂逅と格闘があるのが最高。この光景を見られただけでも見た価値あった。
 ジャックを導こうとする今のサムが全シーズンで一番好きかもしれない。人を救うために奔走しながらもずっとどこかで自分を汚れた存在と感じていたという経験から来た、サムというキャラクターの集大成という感じがする。今までもサムは「真の怪物になるかどうかは自分の意志で選べる」と自分のことも他人のことも信じようとしてきて、時には成功もしたけど失敗の方が多かったから、今度こそその願いが実を結んでほしい。実際サムは誰かを導くことに向いてると思う。頭は良いし、礼儀正しいし、相手に寄り添う説得ができるし、忍耐強いし(これはディーンが絡むとたまに無くなるけど)。
 サムとディーンがジャックの教育方針で揉めるの両親かな?おまけに「最後に二人で(狩りに)出かけたのはいつ?」って両親かな?
 前シーズンのつまらなさが嘘のようにめちゃくちゃ面白い。ジャックの「人を傷つけても何も感じない僕は怪物かも」に「何者でもいい。何をするかが大事」って回答が来るのは痺れた。いやでも「何も感じない」のは問題かもしれない。内心では思っていないのに「善い人間になれ」という指示に従っているだけだとすると……。
 虚無に「安らかに眠れ。自分を救え」と言われて「私はもう救われてる」って返すキャス最高にかっこよかった。それがウィンチェスターになのかジャックの存在になのかはわからないけど。
 カスティエルがジャックという最強のカードを手に入れたおかげで、あのルシファーに対して言葉責めで完全な勝利を収める日が来るなんて夢にも思わなかった。
 ガブリエルが再登場してなぜだかわからないけどめちゃくちゃ嬉しい。でもそうなるとS5ではルシファーと生身での命のやり取りをしないで、騙くらかす方を選んだということになるからちょっと複雑かもしれない。
 ルシファーの方も子供には好かれたいという気持ちがあることに驚き。かつての自分は父親に認められたくて頑張ったけど結局上手く行かなくて、今度は自分が父親になっても神と同じような振る舞いしかできないかもしれない可能性に怯えるような心があるというのは意外だった。ジャックにとっては母の遺言とカスティエルへの信頼が勝って、ルシファーはいらないと思っているところが皮肉というか因果というかで興味深い。
 ルシファー、天使を増やせるというのも翼を戻せるというのも嘘で、新しい神を気取るかと思えば具体案は無くてふんぞり返るだけって正直メタトロンといい勝負だぞ。彼が女性との関係で真心に目覚める展開になったら残念過ぎて推せなくなると思って怯えてた(一応恩寵がほとんど底を尽いたことによって生まれた孤独感があったからみたいだけど)。でもアナエルの方は最初、夫や息子が好きすぎて何でも許してしまう系の女性に見えたけど、ルシファーのクソガキっぷりにハッキリ意見を言えたり天界の修復の方を真面目に憂慮していたりして意外なほどまともで、侮ってしまったことが申し訳なかった。しかもその後、他の天使にも見限られたのかルシファーの方が飽きたのか不明だけど彼が新しい神になることもやめてただの飲んだくれになってたから、少なくとも恋愛堕ちが無くなったという意味では助かった……のかな?
 ウィンチェスターのためなら命張れるキャスがやけにあっさりサムの命を諦めるなと思ったら、脚本的にルシファーに生き返させられるという展開がやりたかったからか。ルシファーとしては息子に恩を売って良い印象を与えるためにやったわけね。カスティエルのスペックって脚本の都合にかなり左右されてる気がする。S6でイヴとダイナーで話した時は、キャス一人の光で店内のスターシップを全滅させてたのに、今回はそこに大天使を戦力に加えておきながらヴァンパイアの群れ程度にこの体たらく……。
 ロウィーナがサムディンキャスのことを「三人の父」とか言ってたけど全員父なんだ。多いな。兄弟は年齢的に兄かと思ってた。そこからさらに実の父までいるのは多すぎる。
 ルシファーが檻に入った後に発生した悪事がルシファーのせいではないのは一理ある(ルシファーが生み出した悪魔のせいなのは何割かあるはずだけど)し、神が人間を最優先してルシファーの言い分は一切聞かなかったのも事実だけど、ジャックにはそこら辺じゃなくてアポカリプスとかサムを腹いせに拷問したこととかを言った方がいいと思う。しかしルシファーの言葉だけを聞いてるとルシファーは悪くないみたいな印象を抱きそうになって怖い。物は言い様。
 しかしケリーもみんなも100%善意で言ってるんだけどジャックへの「お前が世界を良い方向に導け」ってやっぱ重すぎるよ期待が。「どう生きるかは選べる」って言っても生まれた時から「善になれ」って言われ続けてるからそうしなきゃいけないのかなと思うし、困難なのがわかっててその形に産み落としたのは誰よって話だし。生後半年でそんなことを考えなきゃいけないのは重過ぎるって。
 あのルシファーが泣いたシーンには心底びっくりした。カスティエルですらまだ泣いたことはないのに!?ガブリエルの癌呼ばわりがそんなに効いた!? 前シーズンの感想に「ルシファーは崇拝されてるだろ」と書いたけど、ガブリエルの言う通り崇拝と愛は違うか。でもガブリエル、人間を言い表すのに「純粋で美しい」しか言わないのは夢見すぎじゃないか。悪意も含めて人間だから、別に何も無いところからルシファーが植え付けたわけじゃないんだし。それともこの世界観ではそうなのか?
 ガブリエルとミカエルの戦いまで見られるなんて……ありがとう……。本当に見たいもの全部見せてくれた。「今までずっと逃げてきたけどもう逃げない」ってドベタだけどやっぱり良い。
 まさかのミカエルディーンまで見せてくれて超びっくり。実は見てみたかったんだよ!でも飛びながら戦う姿はダサすぎるから金輪際やめてくれないかな。これじゃ翼じゃなくてワイヤーで釣ってる飛び方だし……。空中でジタバタしてるだけでカッコよさの欠片もない。あとかめはめ波とかも……。
 ルシファーついに退場か……長かったような短かったような……。地球はミカエルにあげてしまって自分は息子と宇宙へ逃げる気だったとは……。過去を捨ててやり直すって絶対それ、ルシファーの人格が何も変わってないからまた同じように癇癪を起して終わる未来しか見えない。しかし力が欲しいだけなら恩寵を抜き取るという手段があったのにもかかわらず、最後まで「息子と二人で」に拘ってたし、最後なんてジャックに拒絶されて半泣きだったから、結局は寂しかったんだろうなあとは思った。親との関係が悪かった人が自分の子供を持って「今度こそ違う形に」と期待することは現実でも珍しくないけど、問題はそこじゃないんだよ。「子供ならわかってくれるかも・一緒にいてくれるかも」という期待そのものが命取り。ルシファーも結局は「息子に愛される父」になると同時に、息子にかつての自分を投影して「正しく父を愛する息子」となって過去の自分を癒したかったんだろうけどね。でも自分で宇宙を創り直すって出した例が火を吹く竜とか喋るロボットとかだった辺り発想がガキだわ貧困だわで、これは神の足元にも及ばないわ。
 このシーズンでビジュアル的に見たかったものは全部見られたけど、心理描写の面では正直物足りないな。ミカエルとルシファーとガブリエルの間の愛憎をもっと見たかった。ミカエルは自分の世界のルシファー、つまり自ら愛して育てた末に裏切られた弟を殺した時どんな気持ちがしたのか教えてほしかったし、S5でルシファーがガブリエルと戦った時に「俺にこんなことさせるな」と悲しそうだったところがすごく好きだったから、そういう葛藤や矛盾をもう少し見たかった。ただガブリエルがルシファーのことを癌呼ばわりして「もう遅すぎるんだよ」と徹底して辛辣だったところは悲しいけど、誕生から百億年だか数十億年だかが経っていて、ルシファーがアポカリプス後でも一切反省せずこの様だから……億単位まで行くと規模が大きすぎて、ここ数年の出来事で変わったとか言われても説得力が無いのはわかる。たぶん天界も地獄も人間も思う通りに支配できないことがわかった後のこの「手遅れ」呼ばわりがトドメになって、ルシファーは宇宙に行くことを決めたんだろうな。

-Season14-

 日本語字幕で、キャスが恩寵を失っていた時の「何も無い状態」をディーンなら「オマケ無しの」と言うって話めちゃくちゃ良い。特別な能力の方をオマケ呼ばわりするところがマジでディーン。 「君には俺の気持ちはわからない」って言うニックにキャスが「いやわかる」って言うから何かと思えば「自分も乗っ取ったんだ」って話をしだして、いや何でそれで行けると思った?人生を奪われた話をしてるのに自分が奪った側ですって暴露してどうする?共感で攻めるの下手か?そりゃルシファーくんも「あんたもあいつと同類ってことだな」ってなるよ!マジで何でそれで行けると思った?
 キャスとの会話で向こうのミカエルが心情を話してくれたけど、向こうのミカエルはもう良い息子でいるのはやめたのか?望みは普通に「人間のいない世界」?それは天使の発想してはかなり普通というか、最終的にルシファーと同じところに辿り着いてるけど……。言われてみればミカエルにとって大事なのは父の側に立つということだけで、「人間を愛せ」という命令は別に守ってなかったわ。そしてアポカリプスが終わったらもう目的を見失ってしまった?結局良い息子になったところで得られるものは何も無かったという……。
 ルシファーの役目は終わってもまだニックとしてのシナリオがあるのは嬉しい。単純にマークの見た目が好きだから。自分の身体で行われた罪の数々に慄いて泣いてるところがルシファーとの明確な違いを感じられて良い。しかもまだルシファーだった頃の癖が残っていて、殺しに対する抵抗が無くなっているみたいな描写があるし。今後の展開が楽しみ。
 ジャックからの「もし助けられなかったら世界とディーンのどっちを取る?」みたいな問答がまた始まったけど完全に「いつもの」だな。昔ならともかく今のサムとキャスは……決断までにも後にも死ぬほど葛藤するだろうけど……やっぱりディーンかな。でもダークネスへの魂爆弾の時は受け入れたんだっけ?じゃあもうわからないわ!結局「どちらも助かる未来」はうやむやなままだな。
 ミカエルのやりたいことが「自分が神に追いついて殺すこと」だったのは、もはや行動原理が癇癪だったルシファーよりは高次元だった。「最初は自分が神よりも良い世界を作って見せつけようと考えた」と言ってたけど、メタトロンに始まってみんな通る道だなあ……。そして自分では神以上の創造性は発揮できないし、そんなことでは神の気を引くこともできないとわかって同じように絶望する。
 ディーンのトラウマに比べて良い記憶が少ない!しかもストリップバーと西部劇ごっことパイとかいうあんまりコアじゃない所なの悲しい!もうちょい何かあれよ!でもたぶんそうなる理由は、ハンターに「完全な勝利」がほとんど訪れないせいなのは大前提として、さらにディーンにとっての一番の幸せが「穏やかな時間」だから、そういう何でもない日は本編ではあまり映さないせいもあると思う。私はS5で言ってた「兄弟で星空を眺めながら無言で何時間も過ごした」って話がすごく好きなんだけど、それを楽しめるのは2人が根本的に穏やかな時間を愛する性格だからだと思う。ディーンの普段の言動はチンピラかクソガキの要素がほとんどだけど、奥深くではそういう繊細さとか愛情深さとか優しさとかをもっているのが最大の魅力。
 ミカエルがディーンのキャスに対する恩に「地獄から救ってくれた」の方を挙げてたけどそっちじゃないと思う。だってそれもアポカリプスの計画の内だし。それを言うならS4ラストの天界を捨ててディーンを選んでくれたことの方だろう。どう考えても不利や非合理な状況なのに、それでも自分と共に来てくれたという事実があるからこうなってるんだと思う。
 ジャックを連れて病院に三人で押しかけて、三人揃って看護師に追い出されてうろうろしてる絵面が最高に良かった。今までキャスはともかくサムディーンが父親って実感があんまり無かったけど、この光景を見たら確かに「父親が三人」だと思えた。
 ニック、殺人の快感に目覚めちゃってるだけでもやべーのに、関係ない人でも見ただけで殺したい欲求が膨れ上がるとか完全にイッちゃってるじゃん!?一人だけ世界観が普通の人間の普通の殺人鬼が出る別のドラマみたいになってる。ルシファーのせいにするとか、家族の死の真相を隠そうとする者への憎しみが暴走したとかいう擁護の余地も自ら無くしてるし。確かにこれまでの魂を無くした人たちは「その方が合理的だから」殺人を厭わなかっただけで、快感を覚えてはいなかったかもしれない。思えば初めてルシファーが憑依したときも引き金は共感だったから、もともと2人の精神性は近い所にあったということなのか?もちろん今は憑依の影響でニックの魂が壊れたせいなのは前提として……。良心との葛藤で苦しむよりも、いっそ何もかも委ねて感じなくなりたいというニックの気持ちはわからなくもない。でもこれで前シーズンまで地に落ちかけてたルシファーの威厳一気に取り戻したわ。わざわざ自分から求めなくても向こうから勝手に求められるのが真のカリスマってものよ。ルシファーくんの出番は終わったと思ってたけど、また出てきてくれそうで実際めちゃくちゃ嬉しい。
 ジェンセン・アクレスの演技力ほんとすっごい。表情だけで全部伝わる。サムの後ろを通り過ぎるかと思わせて、やっぱり愛しさが溢れて寄り添うようなあのハグが良すぎて何回も巻き戻してしまった。
 あれだけニックが真相真相ってこだわった割には素直にルシファーのせいで予想通りだった。しかも実行犯のアブラクサスもあっさり殺せてしまうし。でも憑依する作戦のためにニックの家族を自分で殺したということは、あの時のルシファーの一連の言葉も演技だったってことになってしまうから微妙だな……。いや「理不尽に抗う」という部分は変わってないから同じことか?でもな~神への問いかけという点が重要だと思うんだよな~。私としては、自身と似た境遇の者のもつ「理不尽な世界を問い正す痛切な怒り」へのルシファーの共感は本物であってほしい(それが結局は自己愛から来るものでも)。
 ディーン「お前といると決心が鈍る」ですって……。サムのことをどれだけ愛してるのかがこの言葉だけで痛いほど伝わってくる。少ない言葉や動作に万感の思いを乗せるのが上手すぎる。
 ミカエルを自分ごと閉じ込めるためにディーンが死に際の告解みたいなことばかりいうのがすごく辛い。でもあんたが良い兄じゃなかったら逆に誰が良い兄なんだよ!というか「俺が家を飛び出したんじゃなくて親父が追い出した時があった」!?普通に虐待じゃないか!これ以上株下げんな親父!
 ザカリア出るの知らなかったから本当にびっくりした!異世界編では同じ役名だけど別の人が出てて、あの役者さんが好きだったから残念に思ってたのに今度は本人で超嬉しい!私は親父に興味無いけど(S2から瘦せすぎて言われないと誰だかわかんなかったし、サムが出て行って間もなくならもっと性格尖ってるだろと思うし)、記念すべき300話でディーンとサムが幸せそうでよかったねと思ってたぐらいだったのに、嬉しすぎるサプライズ。出てた時間は少なかったけど本当に助かる……ありがとう……。
 しかし「何でも欲しいものを与えてくれる真珠」なのにディーンが心から望むのは今も昔も「家族が揃って幸せでいること」なのが最高に推せるところ。しかも親父の「出来ればお前には家族を持ち普通に生きてほしかった」にディーンが「家族ならいる」って返すのめちゃくちゃいい~。「普通の家族」にこだわった頃もあったけど、たとえ普通じゃなくてもディーンが自分で選んだ道で、守ってきた家族が今ここにいてくれることが何よりも大事だから、何も悪いことなんてない。ディーン・ウィンチェスターってやっぱり最高。
 キャスと虚無の取引で、単純な「私を代わりに連れていけ」だったら話の流れ的に回避されそうな確率は高いけど、「いつかお前が心から幸せになった時」とか言われると急激に真実っぽくなる。そういうシナリオが具体的に用意されてるんだろうなと。キャスがS15で死ぬことは知ってるけど、これが収束してそうなるのかな。存続すること自体が理由になってダラダラ生き続けるよりもどうやって死ぬかの方が大事だから話の内容次第だけど、何であっても見たらめちゃくちゃ泣くんだろうなあ……。でも心底幸せな状態から虚無に突き落とされる絶望を狙ってるんだろうけど、その幸せを最後の瞬間にして死ねるならある意味幸せなのではないか?
 キャスはもうとっくにウィンチェスターたちを見送る覚悟はしてるんだな。そこら辺は深く考えたことなかったけど、何千年も生きてるならそりゃそうか。サムやディーンのために身を粉にして尽くしても、人間はすぐに死ぬし、彼らが死んだ後に自分だけは生き続けるということをキャスは経験で知っている。S4のときも、天使が天界を捨てるということがどういうことなのかディーンも視聴者も本当には理解していなかったのと同じように、天使が人間に肩入れした先に待っている結末の重みも究極的には人間には理解できないのかもしれない。刻印の時もだけど、表に出さないだけでキャスがそういうことをずっと前から考えていたのかと思うと、グッとくるものがある。
 いつの間にかサムが洗脳で他人の旦那役として吸収されてる回が申し訳ないけどめちゃくちゃおもしろい。今期で一番かも。サムにも似合わない髪型ってあるんだ。それに地獄の犬を殺す回でも思ったけど、眼鏡をかけると感動的なほどオタクっぽくなる。全然似合ってないのに「何か?」みたいな顔で出てくるのがめちゃくちゃおもろい。S14は20話しかないからギャグ回が少ないのかな?
 せっかくサムたちがジャックの情操教育を頑張ってたのに恩寵と魂無しが同時に来たせいですべてがめちゃくちゃに……。ジャックは素直で優しい人柄のおかげでここまで味方を増やしてきたのにこれじゃあ長所が無になってしまったじゃないか。
 キャスまた相談無しで悪化するパターンかよと思いはするけど、信じてきたものがもはや叶わなくなったことを認めるのは怖いし、今まで上手くやれてたからまだ何とかなると思いたかったって気持ちはすごくわかる。二人を煩わせることなく解決したかったのも。サムディーンの心に負担になるからってのも事実だし、そんな二人を見る自分も辛いからってのもあるし、単純に自分の至らなさを詰られるのは嫌なものだし。でも冷静に考えたらこれS6から成長してないんじゃないか?
 ニックの最後「僕を強くしてくれ!」のところで、あ~これ無理なんだろうな~って悟ったけど、死に方は流石に哀れだったな。サラの幽霊にもせっかく会えたのに、その喜びよりもルシファーじゃなかったことにがっかりする方が大きくなる日が来るなんて……。一度憑依されるとその存在が焼き付いてしまってもう以前には戻れなくなるというのは大天使の超常性を感じて好きだな。
 ボビーがまた出てくれて最初は嬉しかったけど、同じ顔なだけでもう二人のことをぶっきらぼうかつ愛情たっぷりの声でBoysとかSonとか呼んでくれないし、抱きしめてもくれないのかあとか思ってしまう。
 ジャックが生まれたばかりの時はどこの勢力も彼を利用したがってたけど、彼が魂を失ったことでまたその状態に逆戻りしたってわけね。自分の基準を持たない、世間知らずの、力だけはある存在なんて利用し放題・恰好のカモじゃん!ドナテロの「周囲に溶け込みたい時は、大切な人だったらどうするかを考えろ」というアドバイスはものすごくためになるけど、ジャックはサムやディーンのことをそこまでよく知らないというのが一番の問題かもしれない。「サムとディーンも喜ぶ」なんてデュマの言葉を信じちゃう辺り、全然二人のことわかってない。というか単純にあいつらの真似しただけだとむしろやらかす確率の方が高いんじゃ?
 しかしルシファーの幻覚がジャックの脳内の一意見の現れでしかないとしたら「彼らは本当は愛してない」とジャックが思ってるということになってしまうけど、節穴かな?所詮二歳か……。しかし「本当の愛じゃない」とかルシファー(ジャックの意見の代弁だったら濡れ衣で申し訳ないけど)にだけは言われたくないわ。お前も自分の過去の投影でしかなかったろうが!別にお前なりの愛なのは否定しないけど、それでもお前にだけは言われたくないわ!
「学習しろよ」とキャスに対して思うことは多々あるんだけど、兄弟のためにめちゃくちゃやってしまってもう戻れないって時のキャスが正直一番好きなんだ。特に兄弟のために半分衝動というか使命感と言うか危機感と言うかに駆られて同族を殺した時の、「あーあやってしまった」って途方に暮れた感じが申し訳ないけど最高。
 二人がジャックの信頼を裏切ったと言ってもなー、彼が魂無しでもサムディーンのことは変わらずに信じてたのは本当だけど、先にジャックがメアリーを殺したのがやっぱり……。しかもそれを事故だったで流そうとして、本心では全く悪いと思ってない(魂無いから)のが態度に出てるし……。ディーンがジャックを殺すことに関してやたら決断が早いのは尺の都合か?というのは置いておいて、もしサムが相手なら何があっても最後まで粘るだろうからやっぱ家族と言っても温度差はあるよな。ぶっちゃけ私としてもまだ二年だから思入れがそんなに……。いやでもキャスは二年も経てばもう欠かせない存在になってたからやっぱキャラ立ちか……。三人の中ではディーンは一番ジャックに対して心の距離的に遠いかな。正直ケビンと似たような位置に見える。逆にメアリーに一番近いのがディーンで一番遠いのがキャス。だから今の状況で天秤が傾く方向が違うのは当然と言える。
 最愛のディーンとジャックの間に立ってキャスはどうするんだ!?どっちを取るんだ!?って気になりすぎて前のめりで見てしまったけど、結論が出る前にジャックが吹っ飛ばしてくれて安心したようながっかりしたような……。
 神ってこんなんだったっけ?真剣な時に「名場面じゃないか!」みたいなことを言う嫌味な奴だっけ?サムに「作家だから僕らの人生で遊んでる」とか言われてるけど、今までのチャックからそんな印象は抱いたことないな。作家は確かにキャラクターを動かしてエンタメを提供する存在かもしれないけど、チャックは創造者だからこそ登場人物の選択に口を出さないしどんな結果になっても尊重するという真摯さはあったと思う。あくまで見物人の姿勢だとしても彼らの痛みや苦しみや喜びを軽いものだとは思ってなかった感じがしてたんだけど、地上にいない間に意地が悪くなった?

-Season15-

 ロウィーナの死の後ディーンとキャスが対面して、仲直りと喧嘩のどっちが出るかなと思ったらやっぱり喧嘩かい!いつも後手に回ってるんだから強敵が出現する前に止めたのは英断かもしれないだろ!?ディーンの塩対応が今までの最高値でこれからキャスがどう最高の幸福を得るのか見当もつかない。キャスが去る時の「君にはサムがいる」って発言はこれまでのディーンによるサムとキャスの扱いの差を考えれば残当でしかない。 
 ミカエルだ~~!やった~~!ずっとこの時を待っていた!最終章だから今までの心残りを解消してくれて嬉しい!特にミカエルの出番少なかったから。10年の間にアダムと結構良い関係築けてそうで、もしかしたら器と天使で一番の成功例の可能性ある?「神が会いたがってる」と言われてまず嘘と認定するのも、「あの方が直接出向けばいい」と返すのも、リリスに触られて不愉快そうに焼き殺すのも完全に期待通りの対応!しかしアダムが言い方次第で兄弟の味方に付いてくれそうな雰囲気で意外。拷問されてたわけじゃないからか?ミカエルとアダムの関係が良好で、精神の部屋で普通に意見を交わし合える程度なのがものすごくいい。今まで居そうで居なかったパターンだ。ミカエルにとっては神は服従すべきものという認識から全く更新されてないから二人に「神は敵だ」と言われても反応が悪いのか。しかしミカエルの振る舞いは完璧だった。ウィンチェスターの言葉を否定して神を信じようとするけど、証拠を突きつけられてしまったから協力はしてくれて、でも二人と一緒には来ない、この距離感が素晴らしい!そしてこの10年で培われたアダムとの関係も違和感なく組み込まれている!文句のつけどころがない。
 神、他の結末いくらだって書けるのに、何を描いても兄弟殺し合いからの残った方自殺エンドしか書けないって闇の性癖に目覚めすぎだろ。
 ディーンお前キャスに対して見つめ合うと素直におしゃべりできないかよ。別に喧嘩してていいから一緒に居ろ!もう置いていくな!とハラハラしていたけど二人が仲直り出来て本当によかった!ディーンにとってもキャスにとっても祈りって特別なことだからそれが届いたってのが……ああ~~安心した……。敵に捕まっても隙を見て戦って逃げおおせた上に花までしっかりゲットなんて近年稀にみる有能天使。キャスディンが喧嘩するのは心苦しいけど、ディーンが顔を向けた時にキャスが顔をつい逸らしてしまうのも、ディーンの方がそれに気付いて気まずそうなのも、ロウィーナに心配されて同時に「平気だ」って返すのも悪くはない。離れ離れになるよりはいい。しかしキャスが電話に出ないって時、祈ればいいんじゃないんだろうか……?特に留守電聞いてないって時に祈りなら自動的に届くのでは……?
 やっぱり被造物には無責任と取られるけどチャックの創作者としてのドライさ、言い換えれば誠実さのようなものは好きだったから、ラスボスにするために無理矢理闇堕ちさせられたみたいなのは何だかなー。というかウィンチェスター兄弟の功績の全てが神の加護の元だから出来たことだったみたいな設定は正直不快だな。だってS5で運命を覆したことまで神が「その方が盛り上がるから」と用意した筋書きだったってことでしょう。後から「今までのはフィクションだったんだよ~」とか言われたらあの時一喜一憂したのが無意味だったみたいな……。だからディーンは怒ってるんだろうけど、私はメタ的に考えて神をラスボスにするための都合じゃないかと思ってしまう。そういえばS5時点のチャックが原稿を書いてたのが、出来事が起こる前だったのか後だったのかって考えたこと無かったな。事前に書いてたとしたら今シーズンで問題になってることくらいとっくに作中の誰かが気づいてても良い気がする……と思ったけど原稿の存在を知ってるのは視聴者だけか?S5視聴直後の私は、なんとなく事後の記録だと思いこんでいたんだけど、なぜかと言えばそうでないとサムディーンが死にものぐるいで導き出した覚悟と決断が何も響かなくなってしまうから。アポカリプスの筋書きは作ってあっただろうけど完成原稿?は違うのかなと思ってた。だから私の中のチャックの認識って、作者ではあるんだけど一から十まで埋めてあるわけではなくて、土台だけ創って後はキャラが勝手に動いたみたいなタイプだと思ってた。S11で、自分を差し出すことで創造物を残してサムとディーンに後を任せるという彼の決断が結構好きだったから。そういう描写から、この世の誰からも違った価値観を持つはずの神の人柄を自分なりに掴めたと思ってたから、今になってそれらがすべて演技に過ぎなかったかのように後出しされるのは不愉快。
 キャスが最近有能天使なのは有難いけど、やっぱりジャックのためじゃ物足りないんだよなー。ディーンのために尽くすのでないと。あの契約は逆に言えば最高の幸せを得られるという確約みたいなものだからある意味幸せなことかもしれないが、その幸せはやっぱりディーンに関わることでなければ納得できない。だって最後だから。これからも生き続けるなら良いけど最後だから。
 キャスのFaithってのは要するにジャックが世界をより良い方向に導くと信じてるってことで、それは妄信でも計画でもなくて信頼だということなんだろうけど、ジャックが導く世界ってのの具体的なビジョンが見えないからピンと来ない。「神の計画が壊れて自分を見失った時期」ってS6~S12前半までを指してることになるけど、そう言われると迷走期長いな!?確かにいろんなことやらかしてきましたね~。
 キャスの死についてごちゃごちゃ考えたり何かの弾みでネタバレ見ちゃうよりは思い切って最後まで見てしまった方が良いのかもしれないと思った。サムディンが死ぬと聞いてもそこまで傷つかないのは、あいつらに出来ることはやり切ったと思えるからで、なぜキャスだとダメなのかって私がまだ満足してない・キャスはまだやれると思ってるから。だから「真の幸福」の内容次第では満足して見送れる可能性も全然あるわけだ。ジャックの爆弾の件で珍しくキャスが報連相してて驚き!最終章でついに報連相を覚えた!?しかし死神のノート通りって結局「誰の」が違うだけで筋書きの中じゃん!と思うけどどうなるんだろう。
 ディーンの「ジャックは家族じゃない」は衝撃ではあるけど理解はできる。あれもこれもと背負いきれないからある程度の線引きは必要だと思う。でもそれでいいのか?ディーン・ウィンチェスター最終章がそれでいいのか?「家族は何よりも大事だけど、家族じゃないなら死んでも構わない」が答えでいいのか?
「チャックを殺すためなら何でも差し出す」と言うディーンに対してサムが「僕も差し出す?」って何の話!?今はサムを差し出すような状況じゃないのになぜ仮定の話を!?サミちゃん必殺の泣き落としが始まって「ディーンはずっと僕を守ってくれてたよね」ってマジこれ何の話!?ディーンがサムに銃向けたと言ってもどうせ撃てるわけないのわかってるし撃てたとしてもせいぜい脚……も無理かも。でもサムを振り払いたいならそれくらいしないと無理だから「ディーンはそんなことしないよね?」と言いたいのか?意見に反対する・しないじゃなくて、阻もうとする僕を傷つける・つけないの軸で勝とうとしてる?そんなんディーンが勝てるわけないじゃん!!?私としてはディーンが銃出したのは「これくらい本気ですよ」のアピールであって、実際に撃てるわけないと思って軽く流してたんだけど、「僕も差し出すの?」はそこにかかってるんだよね?
 家族団らんの回にキャスがいなくて、いつも家族だとか言ってるくせに何で除け者!?と不満を抱いてしまったんだけど、もしやそこにいたら最高の幸せを感じてしまうからだった……!?
 キャス、あの状況からどうやって幸せになるのかと思ったら「幸せは手に入るものではなく、あるものなんだ」ってあいつ最後までパワー理論だったな……。でも恐れてたより彼の最後にずっと満足してる。「もう何があっても良いからディーンの隣で死なせてやってくれ!最悪幸福でなくても良い、死ぬときはディーンのためにしてやってくれ!それだけ叶えばいい!」と最大限にハードルを下げて挑んだからかもしれないが、最後まで愛に準じた男だった。でも「the one thing I want...it's something I know I can't have.」って何!?欲しいものはあるけど手に入らないって何のこと!?いやでもその後に続くのがディーンの話で、というかディーンへの励ましで、この流れでそれに当てはまるものディーン以外に何がある!?「手に入らない」ってどう頑張ってもディーンにとってサム以上に大切なものになれることは無いということを指してるんじゃ!?それかディーンの役に立ちたくてやることがいつも大惨事に終わることの方か!?私だってこの取引が発生してからキャスの幸せについて考えたけどそんなん……ディーンしかないじゃん!役に立ちたいとか認められたいとかもあるけどそれらは二次的な物で、究極的にはディーンが生きていてくれること、ディーンの存在そのものでしょう。でもホントに最後の最後に言うことが「君は愛に溢れた人間なんだ」ってお前……お前……マジか……。ディーンのことずっと見てきて、知っててくれてて、信じてくれてて……。そうなんだよ、愛ってのは手に入れるとか入れないとかそういう問題じゃなくて、ただ愛してるってことなんだよ。しかもその後ディーンの肩に手形ついてるの見てもう……あいつ……本当にディーンのことが好きなんだな……と感極まってしまってもう涙で画面が見えない。ディーンはツンギレなだけでキャスの想いをちゃんと理解はしてると思う。ただそれ以上にサミーちゃんが大事なだけで。でも私はそれを報われてないとは思わないというか、サミーちゃんを愛してないディーンなんてディーンじゃないし、そういうディーンだからこそキャスは愛してるわけだから、報われる=同じ気持ちを返されるではないと思うんだよ。まあ理屈でそう思っても寂しくないわけではないんだけど。
 ルシファーが再登場すると思ってなかったからびっっくりした!しかもミカエルと会うなんてあまりに待ち望んだ光景すぎて卒倒しそう。しかもミカエルの開口一番が「こいつを信用するのか?」で完全に解釈一致すぎて死んでしまいそう。
 と思いきやルシファーマジかよ親父のビッチに成り下がりやがって!どうせまた捨てられるのに!?プライドは無いのか!?……とは言っても妙に納得する部分はある、というかS11での和解後の猫ちゃんぶり見てると、状況が変われば神にべったりになるんじゃないか?と思わせる部分はあったと思う。
 ミカエルが結局神の側に付くならルシファーとの件何だったん?と思ったけど、ルシファーの方を復活させて自分は無視されたとわかったからか!いやでもその感情の移り変わりを兄弟が完璧に理解してるの何で!?しかもジャックを爆弾にしたことでエネルギー吸引機になったって何!?どういうこと!?勢いで言ってない!?でも死のノートは結局読めないから俺たちのやり方でやるって展開は流石だった。筋書き通りなんて二人らしくないからね。でもミカエル結局報われてなくてだから言ったじゃん!一番尽くしてきたからこそ期待してしまうのわかるけどと思った。結局一番悲しい奴ミカエルじゃないか?
 まるで最終回みたいな19話で最後何やるのかな~日常で終わるやつかな~と思っていて、でも兄弟が死んで終わるらしいことだけは知ってたからショックとかではないんだけど、狩りの中で死ぬのかあ~……ディーンらしいけど……らしいけど……。でも最後の兄弟が素晴らしすぎて何も言えないわ。好きなキャラが死ぬ瞬間まで文句無く描いてもらえるって本当に奇跡みたいに贅沢なことだから……。二人が手を重ね合わせただけでも感極まるのに額と額をくっつけるところが……ジェンセンの涙最後まで素晴らしかった。美しいって言っちゃうと顔の話みたいだけど(顔もだけど)何というか透き通ってて……。死ぬのはそりゃあ悲しいけどそれ以上にディーン大好きって気持ちでいっぱいになって、終わりの時にこういう気持ちになれるってことがどれほど幸せなことか。老化したサミーちゃんがピッカピカに保ってるインパラに乗ってディーンを想うところも涙で画面が見えなかった。
 しかしボビーが「ジャックが天国を作り変えた。キャスも手伝ったけど」って言ってて、あいつ戻ってるの!?ジャックが来たのは神になった後でだろうからキャスも戻ったってことでいいのか!?最後出なかったのはあんな鮮烈な別れ方してすぐ出てきたら台無しだからいいわもう!元気であれば!(そういえば兄弟とキャスの寿命差について前に考えたりしたけど、この世界だと人格そのままで天国に行くだけだし、天国は天使の領域なんだから会おうと思えばいつでも会えるのではないか?) 

 完結による感情の高ぶりが抜けてから冷静に考えてみると、神を倒す所は正直勢いで押し切ったと思ってる。でもそれは神を殺すというのがあまりにも大きすぎる目標だったのと、どうにかして話を終わらせないといけなかったせいだと思う。最後にディーンが死んで終わるのも、ただ狩りを続けていくだけだと今までのシーズンの終わり方とあまり変わらなくなってしまう気がして、それなら兄弟が死ぬ方が完結感が出る気がするけど二人同時に死ぬのはなんか間抜けだし、そのうえ怪物の方を勝たせたみたいになるから微妙で、じゃあ死ぬとしたらどっちかと考えたらディーンがサム無しで老衰まで生き続けられるビジョンが全く見えないから、彼が先に死ぬことになるのは割と納得できる。
 やっぱり話の完成度としてはS5までがよくて、キャラの色々な面を見られるファンサービスとしてはS6~S9がよかった。S10以降は正直深みが足らないというかノリと勢いでどうにかしてる感じだった。特にクラウリーとかルシファー辺りのIQが下がり気味だったし。状況によって手を組んだり離れたり色んな登場人物の思惑が絡み合うのは前と変わらないんだけど、登場人物それぞれのバックグラウンドとそこから生まれる複雑な感情や関係の描写が終盤になるほど減っていったと感じた。兄弟とキャスのことは納得してるけどそれ以外が。特に神がただの陰険な存在になってたのと、ジャックがまだ生まれて間もなさ過ぎてちゃんとした人間関係を築くような段階じゃなかったのが大きいかもしれない。ミカエルが最後に父親に着いたのは彼のキャラクター性としては自然な気がするからそういうのがもっと欲しかった。
 個人的にはルシファーの描き方に違和感があって、彼から父への感情はともかく、ミカエルへの感情は高き者への嫉妬だけじゃないはずだと思う。ケツ野郎事件の後の台詞でルシファーが「私の兄を?」とわざわざ言うのも「ミカエルに関係を持つのは私だけ(dick withの意味が分からないので仮定する)」と言うのも、つまりはどんなに文句があっても兄は兄だから他人に害されるのは許せないということだと思うから。そもそもルシファーはサムの同位体だから、サムにとってディーン>父であるようにルシファーにとってもミカエル>神のはずではなかったのか。だから「父がミカエルではなく自分を選んだ!ミカエルに勝った!」という気持ちが発生しないとまでは思わないけど、気持ちの優先順位としてはもっと低いと思ってた。あの墓場の段階であってさえ、ミカエルさえ了承してくれればいつでも迎え入れる気だったルシファーが好きだから、あの時の兄愛はいったいどこに捨ててきたんだろうということが最後まで気になった。

 キャスの「the one thing I want...it's something I know I can't have.」がディーンおよびディーンの愛だというのが、私の願望にすぎないかもしれないというカプ厨にありがちな恐れから他の可能性を考えてみたけど、ディーンでないとすれば次に来るのはほぼ確定で世界平和。キャスの人格的にそれぐらいしか思いつかない。でも虚無との契約の時点ではそれはジャックがやってくれると信じていたんだから「契約をして以来ずっと考えてきたが、全く答えは出ていなかった」や「手に入らないと知っていたから」は当てはまらない。それにその後の「手に入れる物じではなく言葉にすることだ」にも繋がらない。だからやはりそこに入るのはディーンしかいない。
 しかしあのセリフを見てキャスに対する見方が変わった。ディーンを大好きなのは当然知ってたけど「手に入れたい」だとは思ってなかったというか……。いやディーンをというか「ディーンにとって自分が重大な存在になること」でもいいけど、少なくとも現状では満足できていなかったということになるから。私が考えていたよりずっと切実だったんだなあと……。
 最終決戦の前にキャスが死ぬこと自体はまあ、ディーンの死後にキャスがいるとサムと慰め合うことが確定してしまって普通の生活は送れないだろうし、妥当な線だと思う。ディーンの死後にキャスサムが身を寄せ合って暮らすのは割と見たいけど、延々ディーンの思い出をぽつぽつ語り合いながらお通夜みたいな雰囲気で前向きにはなれなさそう……。楽しかったことを笑いながら話すんじゃなくて何か……ぽつぽつ話して束の間無言になった後「ディーンに会いたいよ……」って泣きだしそう。お互いの顔を見るとディーンのこと思い出しちゃうからしばらくしたら辛くなって別居しそう。
 ディーンがキャスに我が儘な怒りっぽさを発揮できるのはディーンなりの甘えなんだろうけど、それでも終盤の塩っぷりはすごかったな。どんだけ無茶苦茶なこと言ってもキャスは愛してくれるのがわかってるってだけで絶対にディーンの支えになってたと思うけどさすがにね。それでも愛を貫いたキャスのことは心底尊敬するわ……。
 ジャックに関しては、私がガキのキャラ(見た目は成長してるけど精神的に)嫌いってのはあるとしても、彼ってこのシーズンを終わらせるための都合のいい道具って感じが終始していたから一人の人格として見られなかったんだ。生まれた時から期待される役割があったせいで、彼自身の信念というより周囲からの圧というか誘導というかの要素が強く見えてしまった。サミー達は「正しい方向に導く」つもりでやってたんだろうけど、サミー達の考える幸福にしか触れる機会が無かったのに自由とは?とどうしても思ってしまう。ジャックの中にサミー達に好かれたいからという気持ちもかなりあると思うし、結局彼らの模倣でしかないのではないか?「子供は親の願いを叶えるために生みだされる」という暗黒面を感じ取ってしまう。ジャック自身がこの世界を守りたいと思うような何かがもっとあればよかったのかもしれない。

 何はともあれ本当に素晴らしいものを見せてくれたSUPERNATURAL……ここまで付いてきてよかった!