感想置き場

BLとアサシンクリードが好き

『SERNATURAL』Season1~3 感想

GYAOのサービス終了に伴った無料大放出期間にラインナップにあって、前から名前だけは知っていたので試しにと見てみたらドハマりした記録です。

-Season1-

 面白かったは面白かったけど、最初はサムとディーンの関係にいまいち乗れなかった。その理由はディーンが「弟を守る兄」という自分の存在意義を守るためにサムを求めているのであって、それがサム自身への愛情と言い切れない気がしたからかもしれない。ディーンがサムへの愛を見せる度に「サムが一体ディーンに何をしてくれたというのか?」という疑問が始終私の脳内にあった。狩りの思い出がそれに値するのかと思ったけど、初回からディーンは「どうしてもお前とやりたいんだ」と全力の弟愛だったから違う。しかし彼が弟を守るのも「親父の言いつけだから」が根幹にあるようで、それが無かったらどうだったのか?ディーンは家族さえいれば何もいらないと思ってるけど、サムは親父に対して愛はあっても蟠りもまあまああるし、母さんの記憶も無いしで温度差がある。
 初見の時はあまり真剣に見てなかったのだけど、S14まで見終わった後で戻ってくると色々と発見があって面白い。特に最初の印象よりもサムがディーンのことを好きそうで驚いた。あと一話でのディーンのお願いの台詞が日本語字幕だと「お前とやりたい」になってたけど、英語字幕は「一人で出来るけどやりたくない」になっていてだいぶニュアンスが違う。ディーンは能力的には大抵のことは一人でこなせるけど「やりたくない」のが彼の性格を的確に表している。しかしサムの方も最初はディーンに対して「何しに来た」と冷たい声だけど彼に心細そうにされるとぐぬぬ……となっていたし、案外最初からディーンに対して甘い要素がある。そしてディーンの方がおおざっぱなオラオラ系でサムの方が細かくて礼儀正しい系という、一話の時点で二人の性格の違いを視聴者にちゃんと理解させる造りが素晴らしい。
 しかしジェシカが殺されて燃え上がった時、サムは「No!No!」しか言えなくて連絡する間も無かったのに、ディーンが即座に扉を蹴破って入ってきてるけどいくら何でも早すぎないか?行ったと見せかけて外に車を停めてたとかいう次元じゃないくらい即座なんだけど?弟と協力して狩りが出来たという、ディーンにとって最上の幸せと言えるこの日の記憶に浸ってたとか、単純にサムから離れがたかったとか心情的には色々ありそうだけど、もうあの速度は家の中に陣取ってたレベルだった。
 そしていざサムが親父探しにやる気になったらディーンは自分で「親父を探そう」と言いに来たくせに妙に冷静……というより親父がいなくてサムがいる状態が一番ディーンが安定してる気がした。この辺りからだんだんディーンの家族愛がただ温かいだけではなさそうということが感じられ始める。表に出したらいろんなことが終わるから死んでも言えないだろうけど、実の所親父の失踪やジェシカの死でサムが釣れてディーンが内心で喜んでいる部分は絶対にある。親父のことでサムが一緒に悩んでくれてそばにいてくれるというのは、ディーンが一番望んでる状況なのではないのか?2人の"家族愛"の中に隠された、こういう薄暗い所が好き。
 初見の時も驚いたのだけど、悪霊に怒りを増幅された時のサムが本当にディーンに向けて引き金を引いてしまうところ。そこは「どんなにムカついてても撃てない……」って流れじゃないんかい!今思えばサミーちゃんの中に秘められた怒りが状況次第で暴発しかねないという匂わせだったのかもしれない。ディーンもディーンで、弾を抜いたということはサムが撃つことを予測してたということで、流石弟から自分にもらえる感情の期待値が低い男!
 親父が二人の近くに来ているのに会えない理由は、そもそも失踪したのではなくあえて一人で悪魔を追うことで二人を悪魔から遠ざけることにしたということなのか?でもディーンがサムを頼るとまでは予想してなかったし、そのうえまさかサムが大学を捨ててこっちに来るとも思ってなかった?何も説明せずにただ消える辺りが流石親父だけど、言ったらディーンは120%付いてこようとするだろうから難しいか。ディーンが電話を変わった途端に表情も声も無機質になって「イエッサー」と言うところが、どうしてそうなるかをわかっていてもゾッとしたからサムが嫌になるのもわかる。サムからディーンに対する基本的な好感度は高いだけに、もどかしいというかやるせないというか、一番肝心なところでは自分の声が届かないことを痛感するというか……。
 ディーンと喧嘩別れしたサムがメグには「戻るつもりはない」と言いながら、次のシーンでナチュラルに電話はかけてるところが「サムって案外ディーン好きだな」と思わせるところだった。ディーンは迷った末にかけられないけどサムはかけられる辺りが甘え上手な感じがする。それと一歩間違えたら簡単に死んでしまう仕事だからなんだけど、サムの「兄貴がこの三時間電話に出ない」という台詞だけ聞くとどう頑張っても重度のブラコンにしか聞こえない所に味がある。
 ディーンが感電して心臓がボロボロになるという回で、オタオタして異常に過保護になるサムが宇宙一好き。肩を抱いて歩かせようとするところとか。ディーンはそれを振り払うけど「お前逆の立場だったらやるくせによ……!」と思った。
 これも初見で印象に残ったのだけど、コルトの弾を使ったことを親父が責めずに誉めてくれて「やったねディーン!ようやく親父が認めてくれたよ!」と見ている私は思ったのに、そんなに優しいのは偽物だからだとわかった瞬間の絶望感は何度見てもキく。シュトリーガの時のことはディーンにとってはトラウマだけど、親父はそこまで怒鳴ったり詰ったりしてないし、子供のディーンに背負わせすぎていたとこれを機に気が付いたということならそんなに酷い親というわけでもないなと思ったのにこれよ!ここまでの色んな台詞や表情から、親父もサムが家出してからの数年で自分の態度を考え直したんだろうということがわかるからあまり憎む気持ちが芽生えなかったし、サムの方もちゃんと説明してもらえればすぐに態度は柔らかくなってるからまだまだ親子の関係にも希望はあるなと思わせてからのこれよ!これが親父!「親父がそんなに甘いはずがない」とディーンが完璧に理解してるのはすごいけど悲しすぎる。でもこの後、親父とディーンの板挟みになったサミーちゃんはどっちを取るのかとやきもきさせてからディーンを取るシーンが五臓六腑に染みわたる!やっぱりサミーちゃん案外ディーンのこと好きだな。

-Season2-

 ディーンが幽霊になってウィジャ盤で会話する二人がめちゃめちゃかわいい!S2までのサムちゃんは弟力が全開でめちゃくちゃいい。ディーンの「俺を諦めないでくれてありがとう」も良い。
 親父がディーンのために死ぬのは、ディーンは嬉しくないだろうけど正直「それくらい愛されててよかったじゃん!」と思ってしまった。親父も思ったより甲斐性あるなあと……。サムを救うためでも「弾を無駄遣いした」と怒るのが本来のジョンなのに、最終的にはディーンを救うためにコルトを差し出しても良いという結論に至った辺りジョンも色々考えたんだなあとわかって憎めない。サムには「復讐が最優先事項だ」と言ったけど、本当は素材を要求した時点で取引することは決めてたんじゃないだろうか?親父の愛わかりづらいよ!
 サムがポッと出のおっさんにサミーって呼ばれて「そう呼んでいいのはディーンだけ」と返すのはかわいすぎる!最初ディーンにも「子ども扱いするなサムにしろ」と訂正してたくらいなのにそれはズルいって!こんなデカい図体して弟力が高すぎる!しかしずっと後のシーズンまでたまに言われる「ディーンは心の奥では殺戮を求めている」とか「殺す相手がいないとおかしくなる」という話は全然実感したことないわ。いつも狩りでそんなに楽しんでる様子とか無いし。いや確かに狩りをすることが人生そのものだから、狩る対象がいなくなったら生き甲斐を失うかもしれないけど、その時は普通に別の楽しみを見つけるだけだと思う。
 サムは親父に憎んでると思われたまま永遠の別れになったことに罪の意識を感じて「全然大丈夫じゃないしディーンも大丈夫じゃないだろ」と言うけど、ディーンは親父の死自体に落ち込んでいる場合ですらないほど死に際にとんでもない爆弾を落とされてしっちゃかめっちゃか……親父の遺言の内容知ったうえでこの辺りを見るとそりゃ「言えるかー!」となる。親父って生きてる頃の方がまだ言葉が足りなくても雰囲気だけで愛情を示す能力があったけど、死んでからどんどんタチ悪ポイントが更新されていく。
「死人は蘇っちゃいけない」とやたらディーンがムキになってると思ったら自分のことを言っていた。親父の命と引き換えに自分が生きてるのが間違いだと。ディーンにとって親父の存在は大きすぎるから死んだってだけでも辛くなるには十分なのに、さらにそれは自分のせいで、さらに最愛の弟は自分の手で殺さなければならないなんてディーンを滅多打ちにするにもほどがあるだろ。
 サムと同じ境遇である超能力双子の兄、弟の境遇か何かに嫉妬して彼女を寝取ってざまあみろ系かと思ったら「俺の家族を君に渡さない」とか言い出して驚愕した。このドラマ兄弟の巨大感情ガチ勢すぎる。双子だと一方的に知っていて、でも言えないから親友という体で必死に距離を詰める激重迷惑兄が良すぎる。女の子に対して「あの子は俺たちの間に入った」というヤンデレ前回なところが正直推せる。生まれた直後に引き離されてまだ何の関係も発生してないのに、双子だというだけでここまでぶっ飛べる素質!才能あるよ!でも虐待被害者のマックスはともかくイカレお兄ちゃんのこいつとサムが同じなわけないだろ!サムは自分のことをイカレ野郎だと思い始めていて「僕らは追い詰められれば人も殺せる」と言うけど、普通の殺人犯もそれまでずっと一般人だったわけだし大して変わらないって。「僕が殺人鬼になったらってディーンも怖がってた」と言うけどそりゃいくら好感度が高くても弟が殺人鬼になったら怖いだろ。自分が殺されるのも弟が誰かを殺すのも。もしもの話すら嫌とか、ディーンに嫌われることにめちゃくちゃ怯えてるサム。
 悪魔が作った狂暴化ウイルスの回、他の人は撃つけどサムが感染したら撃てないディーン・ウィンチェスター最高!そのためなら大切なインパラも他人に渡しちゃうディーン・ウィンチェスター最高!サムが死ぬときは一緒にいてくれて、その結果自分が死ぬとしても厭わないディーン・ウィンチェスター最高
 ジンの見せる夢の中でメアリーに会えて心から嬉しそうなディーンのシーンは何度見ても泣ける。でもディーンにとっての最良の世界で「こんなに嬉しそうなディーンを見られるのは初めて!」というシーンが芝刈りなのが何とも言えない気持ちにさせる。しかし理想の世界ならサムとの関係も円満の方が良いに決まってるのに、なぜそこだけシビアだったのだろう。ディーンの自己評価が異常に低いから?あと同じく理想の世界のはずなのに親父が脳卒中で死んでいるというのも冷静に考えると怖い気がするのは気のせいか?親父がいない方がディーンの心の平穏は保たれるという暗喩というのは穿ちすぎか?穏やかな親父があまりに普段のイメージとかけ離れすぎてるからというだけか?
 超能力者の子供たちを使う「来るべき戦い」とはアポカリプスのことだと思うけど、最後まで見てもアザゼルの超能力戦士計画とルシファー復活計画の繫がりがあまりわからなかった。サミーちゃんは生まれる前からルシファーの器になることが決まっていた特別な存在なのに、わざわざ他の人と競い合わせる意味はあったのだろうか?他の候補者はサムの超能力を育てるための捨て石のつもりだったのか、仮にサムが負けたとしても蘇らせて器としては使って勝者は勝者で戦力にしたのか?これについては最終回のアザゼルの台詞で「悪魔は取引でないと死者を蘇生できないからディーンがやってくれて助かった。ジェイクよりもサムの方が良い」というものがあるから、やっぱりサムを使うのが大前提でまさか負けるとは思っていなかったように思える。器になる人間が預言で決まっているということをアザゼルが知っていたのかを忘れてしまった。悪魔は天使と違って預言に拘る気持ちはないのかもしれないが、器としての適正の問題があるからサムが無理なら他でいいやとはならない気がする。
 ラストでサムが「ディーンが僕のために全てを犠牲にしてきたんだから今度は僕がそうする」と健気なことを言っていて、ディーンも弟が自分を諦めないでいてくれることに嬉しそうで、S4のサムを思うとそのディーン愛をどこに落としたんだと苦笑いするしかない。

-season3-

 最初のシェイプシフター回の時、ペンダントを取り返すシーンがアップで映ったから何か深い意味のある物なのかなと思っていたんだけど……超感動エピソードだった……ディーンのサム愛……。そしてここに来てやっとサムの方からディーンへの気持ちが聞けてよかった。「4歳の頃から憧れてたんだからディーンのことなら何でもわかる」らしい。ディーンが「親父からのプレゼントだ」なんて嘘を吐いたのをサムが責めなかったのは、そんなことをしたのが誰のためだったのかちゃんとわかっているからだろう。サムにとっては記憶のないお母さんやいつも家にいないお父さんよりも、身近にいるディーンが一番大切になるのは道理。
 人の夢の中に入れる薬草の回で、夢の中でのディーンも現実のディーンも親父の悪口は言うけどサミーの悪口は一つも言わないことに驚いた。「なんで兄に生まれたというだけであいつを守らなきゃならないんだ!」とか言ってもおかしくはない境遇なのに言わない。夢の中の自分はイコールで本心ということなので、少なくともサムを守るということ自体には異論は無いらしい。それがわかってディーンの愛情には暗い部分もあるが愛情そのものは間違いなくあるんだなと感心した。
 後期シーズン見た後でまた見ると、地獄行きを避けるために兄貴の臓器を次々と取り換えることで命を保とうとするサミーは普通に病んでる。この頃からとっくに重症だったわ。「じゃあ僕も不老不死になればいい!」と発言しているが、それは二人揃って他人から臓器を強奪する怪物になるということなのにそれでいいと思っているということか?サムのディーン愛もかなり重い。