感想置き場

BLとアサシンクリードが好き

『Assassin's Creed Mirage』感想

 アサクリが大好きなので最新作はまっさらな状態でプレイしたくて事前情報も一切見ずに発売日に買ってプレイしたのだけど、いや~~~酷かった。いや「酷い」という言い方だとクソゲーと言ってるみたいだけどそうではない。パルクールもステルスもバトルも操作感はかなりすっきりしてたし不便なところもバグも無くて、遊びやすさと言う意味では歴代随一かもしれない。ストーリーもわかりづらいとか不快な展開とかも無くて真っ当だった。では何が酷かったかと言うと「やる意味がなかった」。

 最初は貧しいコソ泥だけど世界を良くしたいという信念をもっている真っ直ぐな青年バシムが、ロシャン師匠に助けられて一人前の隠れし者を目指して修行する(主人公がイーグルダイブの練習をしてるシーン初めて見た)という素晴らしい導入で、「この好青年の何がどうしてあんな逆恨みおじさんになってしまったのか」という過程を見られると思ってワクワクしていた。気になるところと言えば「自分が功を焦ったせいで泥棒仲間が皆殺しにされたのに吹っ切るのが早くないか?」ぐらいで特に無かった。

 でもここからが問題で、そこから隠れし者の仕事として古き結社を狩っていくのだけど、その辺りの話にマジで起伏が無い。今まではどんな主人公でも初見の時はいつも「次は何が待ってるんだろう」というワクワクがあったけど、今作は「これいつ面白くなるんだ」と思い続けてたらもう最終章だった。標的を狩る理由も「結社だから」だし。まあ確かに結社は人々から金を巻き上げるわ誘拐するわ人体実験するわで最悪だし、バシムの願いも「誠実な人が正当に評価される世界」「貧しい生まれの子供でもまっとうに生きられる世界」なのでおかしいことは無いんだけど、完全に今まで散々見た光景でしかなかった。最後までやってみた私の印象は「ストーリーのおもんないオリジンズ」(私はオリジンズの一番面白い所は「好青年バエク君の行く末を見守るストーリー」だと思っているので、それが無いということは要は一番の長所が無いということ)。風景もほぼ「神殿の無いオリジンズ」だった(さすがにモスクとかは違うけど)。しかし原点回帰が売り文句だったが、今までも定期的に回帰してたしそれと並行して新しいことに挑戦してたのに、今回は暗殺の極意ぐらいしか目新しいところが無いとはどういうことなのか?

 これまでの主人公と比べてバシムにしか無い個性は「かつて来たりし者の記憶と完全に融合した人格を持つに至った」というところ(エイヴォルはオーディンと決別したから)なのに、標的を何人倒してもジンニ―(バシムの悪夢に出てくる怪物)が唸ってるのを数秒見せられるだけで、オーディンみたいに話しかけても来ないし過去の記憶を見せてくるわけでもなくて何も進展しない。「今までジンニ―の幻影は寝ている時に見るだけだったのに、カリフを殺した時以来起きている時も見えるようになった。それはバシムがあの宝に関係しているからだ」という結論を導き出すだけなら途中のストーリーを丸々抜かしても成立する。一応結社の暗殺自体は師匠との絆をプレイヤーに実感させるという意味では必要だったと思うけど。

「秘宝について知りたい」と師匠に話した時にバシムの方もなぜ知りたいのかについて本当のことを言わなかったけど、それは言ったところで「現実を見ろ」と言われるのがわかっていたからで、そしてその返答じゃ結局納得できなかったというところは自然だったし、ネハルの言う通り秘宝と自分の繫がりを知りたかったらむしろ結社に近づくべきだけど、隠れし者になった以上結社はバシムの倒すべき敵で、それでも敵の総長に「神殿に行けばわかる」と誘われてどうしても気になってしまう、という話の流れは良かった。その後で師匠がバシムの疑問に答えられないのに「納得できないというならお前を殺すしかない」と言ってきて、それを言われてしまったらもう「兄弟を信用しろ」とかいう言葉が若干虚しく響かないか?と思った。でもさらにその後で師匠が秘宝および神殿とバシムに繋がりがあることを最初から気づいていたということが明かされて驚いたし、導師ライハンがバシムが神殿に入ることを了承したのになんでロシャン師匠と戦わなきゃいけないのかと疑問だったが、その全ては彼女がただバシムをバシムとして育てたかったからだとわかったら腑に落ちた。神殿に入れば正しい志を持った今のバシムは永久に失われてしまうから止めたかったと。でもバシムの方の「人々の自由意志を守る」という大義に対する「俺の自由意志は!?」という疑問はかなり確信を突いているとも思った。「自由を守るために自分を殺して奉仕する」という矛盾はアサシン教団になっても常に存在しているから。この辺りのやり取りは二人の深い絆とそれゆえの衝突と言うことが上手く描かれていると思った。

 要するに今作の何が不満かと言うと「前世の話が全くこれっぽっちも微塵も無い」ということ。ストーリーの最後の最後でバシムが「拷問の記憶……思い出してきたぞ」とか言うから流石に最後は映像で見せるだろと思ったのに見せなかったことに死ぬほどびっくりした。最後の最後まで匂わせで終わりとかふざけてるのか?「俺を拷問したやつの記憶」がやっぱりオーディンなのかと私は推測したけどそれすら明かさないとか……。ネハルが最初からずっと怪しかったことの疑問が解消されてスッキリはしたけど、こっちはバシムが先駆者の記憶と融合したことは最初っから知ってるんだよ!知ってるから新しい情報を求めてたのに何も無いじゃん!初心者のために先駆者関係の小難しい話を省いたのかもしれないけど、一つの物語として見ても主人公を長年苦しめてきたものの正体が具体的に明かされないんだからカタルシスもクソも無い。

 ヴァルハラの最後で次からはバシムが主人公になるとわかって一番気になったのは、「アングルボザもロキもイスでイス同士は子供が出来ないはずなのに、フェンリルヨルムンガンドやヘルはどういう扱いなのか?狼とは比喩なのか?本当に狼なのか?狼だとしたら『息子を探さなければ』とはどういう意味なのか?探してどうするのか?」とかその辺りだったのだけどマジで一切その辺りに触れられない。まず現代のバシムが一瞬も出てこない。今のバシムが自分の過去を見てどう感じたかすら無いとか、アニムスという設定の意味が無いだろ。今回初めてアニムスの中の人と外の人が同じという特質があるのに何も生かされてない。現代編要らない勢に気を使ったのかもしれないけど、そう言われるのは導入が下手くそ、つまり現代編の主人公が来歴も人柄も目的も描かれずに突然割って入ってくるからであって、それを避けたければデズモンドみたいにちゃんと順を追ってプレイヤーの心理とリンクさせていけばいいだけなのに気の使い方がおかしいだろ。

 あと操作感に不満は無いとは言ったけど一つだけ最悪だと思ったのは、最近製作側がお気に入りの鳥の相棒シリーズであるエンキドゥちゃんがクソの役にも立たないこと。この子がクエスト目標を探せるのは本当に導入だけで、情報が更新された後は全く感知してくれない。そして特に射手システムを考えた奴は痛い目に遭ってほしい。射手の近くに行かなければいいのかと思いきや敷地内に入った瞬間超精度で撃ってくる。どんな目だよ。「エンキドゥを呼んでクエスト目標を探せる」とかゲーム側が誘導してくるが呼べば100%撃ち落とされる。嘘を吐くな。射手を排除すれば呼べるが、そんなことが出来る頃にはもう敷地の奥まで侵入できているので今更マーキングなんて無くても鷹の目でどうとでもなる。使えるのは閂のかかってない扉を探すぐらい。可愛いぐらいしか取り柄が無い。鳥があまりに使えないせいで、ビューポイントをマップ更新ではなく本当の意味で見渡すために使うという初めての体験をした。

「アサクリとは何をやるゲームか」という要素が大体詰まっているので初心者には良いかと思ったのだけど、「かつて来たりし者」の前提知識がないとストーリーが理解できないだろうから無理か。

ドラマ版『HANNIBAL』感想

 前に友達にHuluチケットをもらってラストまで一気見してたんだけど、その時は人肉料理の衝撃とかマッツのカッコよさとかに気を取られてあまりストーリーが心に染みこんでなくて、最近「何か最終回までクオリティが保証されている良いコンテンツが無かったかな~」と考えていたのもあってこのドラマの存在を思い出して、もう一度じっくり見てみることにした。

 そうして全部知ったうえで見てみるとつまるところ、ハンニバル・レクターの恋が成就するまでの話だった。最初に出会った時からずっと「ウィルを伴侶にしたい」という姿勢が一切ブレてなかった。それがウィル本人から拒絶されても全然諦める気配がなくて一歩間違えればストーカーなんだけど、実はウィルの方もハンニバルと一緒になりたい気持ちが心の奥底にずっとあって、その二人の痴情のもつれに周囲が巻き込まれていく……というかなり湿度の高いラブストーリーだった。もう中盤なんて見てて「そんなまどろっこしい愛情表現はいいからさっさとキスせえ!」思ってたもの。私は小説の『レッド・ドラゴン』と『羊たちの沈黙』と『ハンニバル』は読んだんだけど、原作エピソードはかなり取り入れつつも話の主軸はずっとハンニバルとウィルの関係から動かさないから原作とは全然味わいが違った。二人の関係は原作ハンニバルクラリスの関係とも全然違う(私としては原作クラリスとの関係は母ちゃんで、ハンニバルにとって妹が尊い存在でありそのために自分の身を捧げることに疑問は無いけど、そうあればあるほど決して満たされない部分があって、それを埋める存在がクラリスという感じ)。このドラマではもう大体のものはハンニグラム(二人のカップリング名)を引き立てるためのものと思った方がいい。

 シーズン1は共感力で殺人犯を追うウィルが、理解者を欲しがるタイプのサイコパスにとって理想的な存在ということがよく描かれてた。特にその魅力の虜になったのがハンニバルで、彼の作中最初の殺人がウィルの捜査中の事件の手助けになるようにという意図のものだったのが印象的。ここで重要なのが、共感とは相手の感情が勝手に流れ込んでくるわけではないから、ウィル自身もその感情を持っていなくてはならないということ。だから変質者に同類呼ばわりされるのは濡れ衣というわけではないということ。

 シーズン1ではまだハンニバルが善良な精神科医のふりをしているから、ウィルに自分の存在を匂わせたいけど真実に気づかれてもいけないという駆け引きが楽しかった。綱渡りというにはあまりにFBIがハンニバルに疑いの欠片も持たないせいでヌルゲーと化していたんだけど、次にどんな芸術的な死体を見せてくれるかという期待をハンニバルがいつも叶えてくれたからよかった。この頃のハンニグラムで特に良かったのは出会いの時点で「ウィルのためにやるよ」と狙いを定めているところと、その後まだ一話なのにお弁当持参でウィルの家に現れるところと、死体で楽器を作るトバイアスの回で、ウィルが殺されたかも(ハンニバルが自分で行かせたんだけど)と思われてしょんぼりしている所にウィルが無事に帰ってきた時のホッとした顔!あれで「あ、好きなんだな」と察した。しかしトバイアスの回で興味深かったのは、サイコパスどうしは互いの自我が強すぎて反発するから仲間にはなれないけど、ウィルみたいにとことん受動的に同調してくれる人が相手ならなれるということ。ハンニバルは色んな異常者から理解してほしいと迫られるけど、彼には彼の美学があるので他人に合わせて”あげる”というのは性に合わないらしい。

 ハンニバルのヤベーポイントは臭いで腫瘍がわかるという特技でウィルが脳炎だと気づいていたのに、彼が脳の検査を求めた時に「間違った場所に答えを求めるな」と食い気味に阻止しようとしたところ。「必要なら火を消す」とか言ってたけど重症化してからでそんな綺麗に治るかな!?それにそうなるまでのウィルの苦しみは度外視な辺りがめちゃくちゃ怖い。しかもその脳炎すらハンニバルの光刺激のせいだったことが後でわかるという……。ウィル可哀想……。この頃のウィルは共感力で正解のルートを選べているのに、当のハンニバル精神科医なせいで妄想扱いされて周囲にもそれを信じられているのが終始可哀想。厄介なのがそれでもハンニバルの「ウィルを守りたい」という言葉は嘘ではないということ。嘘では無いんだけど「守る」の定義が常人とかけ離れているせいでこうなった。

 ウィルは自分が命を救ったアビゲイルと家族になろうとしていたけど、シーズン1のラストで様子がおかしいからと小屋に置いてかれてるのが信頼関係が全然できてなくて笑えた。おまけにアビゲイルが死んだらしいという時にも、耳が見つかっただけで死体は上がってないからまだまだ生きている可能性は考えられるはずなのに、友人のはずのジャックもアラーナも全然ウィルを信じてくれなくて笑えた。そして唯一信じてくれそう(とウィルは思っている)なハンニバルこそが元凶という……可哀想……。でも意識が飛んいる状態で無意識にハンニバルの所に来てしまうウィルは正直可愛い。困ったらハンニバルに頼る癖がついてて可愛い。自分を陥れようとしている相手のところにまんまと飛び込んでいくところが哀れだった。

 シーズン2になってからは、ウィルをハメて逮捕させるもの釈放させるのもハンニバルで、弄ばれている感がすごかった。ハンニバルとしてはウィルが死刑になってしまったらお友達になれないから困るものね。ウィルの脳炎を治さないのも精神的に追い込むのも彼自身の"本来の姿”に気づかせるために必要な過程という認識なのが怖いところ。だからウィルがハンニバルへの憎しみにのまれて獄中から刺客を差し向けて、今までの「ハメられただけの無実の人間」から本当の殺人(未遂)犯になることはまさにハンニバルの思惑通りというわけ。しかしシーズン2のハンニバルは自分でウィルを収監させたくせにいつもの予約時間は空けたままで物思いに耽ってる(当然内容はウィルの事ばっかり)ってマジ恋。ベデリアの「そんなに寂しいなら最初からハメるな」ってホントそれすぎ。

 アラーナに関しては、ウィルに気はあるけど精神が不安定なままで付き合うと先が見えているという理由であえて距離を取っているという、目先の感情に流されない冷静な女だと思ってたのに、実は最初からハンニバルとどうにかなりたかったみたい?で、一回寝ただけですっかりハンニバルの女になってたので混乱がすごかった。それとマーゴは原作だともっとゴリラ系肉食女子だと思ってたんだけど結構普通で残念だった。恋愛に浸って頭が砂糖漬けになるタイプより「お前に興味はないが強い子を作るために精子寄こせ」みたいなタフネスタイプの方が好感が持てるんだけど、その点アラーナは終わった。初期のアラーナ好きだったのになー。

 ウィルがマーゴとヤるときにアラーナを投影するのはまだわかるけど、その向こうにハンニバルが見えるのはどういう気持ちで見ればよかったんだろう。見たままを素直に受け取るならアラーナの心がハンニバルにあるとウィルが気付いているという描写に見えたけど、本当はウィル自身がハンニバルと寝たいという表れだったのか?でもそれだったら鹿男と自分が交わるのでは?単に男同士のベッドシーンは入れられないゆえの苦肉の策?でもどちらかというとアラーナの方にスポットが当たってる感じだったから、あの感じだとハンニバルの方はウィルを性的な目で見てるけどウィルは(この時点では)ハンニバルをエロい目では見てないように見えた。しかしウィルはそれくらいアラーナと寝たい気持ちがマンマンのくせに、ハンニバルとの関係について彼女に聞かれたら「僕らの間ではわかってるからそれで十分じゃないか?」とか言ってアラーナをはじき出すという、「二人の関係には誰も入れさせない」という対抗心が見え見えで「お前はどっちなんじゃい!」と言いたくなった。シーズン2のウィルは大体これ。 

 ハンニバルの芸術面では「私が育てた」とウィルに見立てて毒の花に飾り付けられたおじさんと、シヴァ神に見立てて「求愛」とか言われたラウンズの死体(偽装)が、今までの匂わせ程度から解き放たれてウィルへの全力アピールって感じですごく良かった。あれでラウンズを殺したのはウィルだと思っているアラーナにウィルが「僕の支援者はハンニバルだよ~」と匂わせて「僕らの間に君は入れない」というアピールをかますドロドロしたところがよかった。でもウィルはアラーナの前ではそうやってイキるけど、その後でハンニバルに「どれだけの良心を犠牲にするつもりだ?」みたいなことを問い質してて、彼の愛情の歪みと重さに引いてるっぽいのがまた味がある。 

 シーズン2のウィルは自分を囮にして仲間になったと思わせて、ハンニバルの現行犯逮捕を狙うという筋書きだったわけだけど、この頃のハンニグラムのポイントはハンニバルがラウンズの髪の匂いを嗅ぐまではウィルの嘘を信じていたという部分。その瞬間までは本気で二人での生活を夢見ていたというところ。そして何より特筆すべきなのはそれに気づいた後、ジャックの来訪前日の二人の会話。

ハ「イマーゴは愛する人のイメージだ。無意識の中に埋もれ、生涯抱き続ける」

ウ「理想か」

ハ「理想という概念だ。私は君への概念、君は私への概念を持っている」

ウ「でも理想にはしてない」

ハンニバル謎の間)

ハ「二人とも多くの物に理想を求めすぎる」

 この謎の間ってハンニバルが「私たちにとってはお互いが『愛する者』だ」と言いたかったのをウィルがぶった切ったということだよね?いや確かにウィルの方はハンニバルを理想とは思ってない感じはあるけど!ここで切ないのがその後にハンニバルが言った「姿を消そう。今夜ね」という言葉!つまりジャックを殺さずに逃げようということで、明日ジャックと会えばすべてが終わってしまうけど今逃げればこの嘘が本当のままでいられるということ。ハンニバルはウィルが裏切っていることに気づきながらも、この夢が続くことを願わずにはいられなかった。ウィルが自分の方を選んでくれたらとこの瞬間、一縷の望みをかけてしまった。この言葉にハンニバルの切実な想いが全て込められている。しかしウィルはハンニバルの誘いを受け入れず、逮捕の筋書きに頑なに拘っているところが本当につらい。

 シーズン2のウィルは表面上での主張とは裏腹に中身はもうだいぶ愛に狂い始めているんだけど、極めつけはFBIがハンニバルを逮捕しに来るのがわかった時のあの電話ね!あれを見た時、せっかく違法捜査してきたのを台無しにする行為にそりゃあびっくりしたわ。ハンニバルと愛し合うという内なる誘惑を捨ててまで選んだ道なのに!結局両方失ってるじゃん!せめて心変わりするのがもう少し早ければ!昨日のディナーの時に打ち明けていれば!その点ハンニバルは全くブレてなくて、アビゲイルと三人で家族になる計画をまだ諦めていなかったと判明するシーンには愛を感じた。そして逃げたはずのハンニバルがそこにいて「君を置いていけない」と言われた時のウィルの子犬のような瞳!言葉で何を言おうがあの顔が全てを物語ってた。

 でもハンニバルがウィルは生かしてアビゲイルは殺したのが引っかかってて、やっぱり彼女の存在を愛しているというよりは幸せな家族ごっこのための道具としてしか見てない印象だった。ハンニバルとウィルの間には「愛しているからこそ思い通りにならなくて憎いし、こんなに憎いのに愛しているから殺すこともできない」というままならなさがあるけど、アビゲイルに対しては二人ともそういうのは感じられなかった。

 シーズン2の重要な論点として、許しについてベラが「意識して許すことも無意識に許すこともある。実際に許すかどうかは選べない。許しとは訪れるもの」というものすごい名台詞を言っているんだけど、それが愛だよなあ……と思った。相手の悪い面まで含めてすべて理解していながら、それでも最後には許してしまう。それは相手の欠点を見ないようにして全肯定するのとは違って、それどころか善いも悪いも評価は必要なくて、ただその在り方を認めるということ。罪に対して罰を与えないという意味でもなくて、罰を受けるあなたごと許すということ。それが愛ってことなんだよ。

 ドラマハンニバルの信条は、神がそうするように理不尽な破壊をまき散らすことで、信徒に対する慈悲だとか悪人への罰だとかは関係なくただ「力を実感する」ための行いだと言っているが、だとすると神に理解者って必要なのか?と思わなくもない。シーズン2のラストのハンニバルは神というよりも愛を受け入れてもらえなくて打ちひしがれた普通の男という感じだった。猟奇殺人鬼や拷問趣味者にとっては痛みを与えることが愛の証というタイプがいるけど、ハンニバルにとって解体して食するのは無礼で下等な豚に対してすることのはずだから、ウィルを切ったのは単純に裏切りへの罰。自分と同じ「食する側」として並び立つ栄誉を与えるのが彼の愛だから、愛する者が不用意に傷ついたり死んでもらっては困るという点では普通の人と変わらないのが複雑というか何というか……。

 シーズン3になってさすがにウィルもあの電話をしたことで自分の気持ちを理解しただろうと思っていたら、未だに「友人だから」とか言ってて往生際が悪くて草生えた。だってあの時点で捜査官としては終わりだからね。ジャックは違法捜査でもあくまで大義のための行動だったけど、ウィルの方は完全に私情だから。それなのにハンニバルを追いかけてイタリアまで行ったり(捜査なのかただ会いたいだけなのか)、絵画の前で微笑みあったかと思えばナイフを取り出したりしてもうウィルがどうしたいのかわかんなかったよ。でも「一緒に逃げたかった」は友情と言い張るには甘すぎるし重過ぎるしねっとりしすぎだよ!愛の逃避行以外に何があるんだよ!脳内アビ―にも「なぜ彼を探すの?」と聞かれて「僕が今までで一番自分自身を理解できたのは彼といた時だ」と返すのはもう好きじゃん!アラーナにも「あなたたちの友情は愛情レベルに達してる」と言われるし、チルトンにも「彼らのは友情ではなく愛情も同然だ」と言われるし、べデリアにも「裏切りと許しは恋にも似ている」と言われるし、千代にもウィルが従順とか喜んでるとか言われるしで、ずっと脚本の意図を色んな人物がご丁寧に説明してくれてた。それにジャックの言う通り、内臓を取られればそれまでに友情があっても終わるよ普通は。終われないから愛なんだよ!

 その一方でハンニバルはウィルに心臓(の形をした死体)を捧げてBe my Valentineしててまっったくブレてなくて、逆に折れなさすぎて怖かった。ただその後にカタコンベで直接顔を合わせずにウィルの「あなたを許すよ」という言葉だけ聞いて帰ってきた時に、ハンニバルが珍しく戸惑っていたというか、それまではめちゃくちゃ怒ってたけど許すと言われて急に気がそがれたみたいな、ウィルが自分を見つけてくれたのが嬉しいみたいな雰囲気出してて「これはだいぶイカレてますね」と思った。これだから恋愛ってやつは……。

 ベデリアとの会話はもうほぼハンニグラムの恋愛カウンセリングになっててそれも大体的確なアドバイスだったんだけど、唯一腑に落ちないのがハンニバルの「ウィルを許すためには食べねば」という発言。「ミーシャとウィルを重ね合わせるなら、過去にミーシャを食べたようにウィルを食べるべき」という理屈なのはわかるけど、シーズン2まででハンニバルが食べるのは無礼者だったんだから、彼にとって「食べる=愛する」ではないと私は思ってたんだけど。それに「許しとは選ぶものではなく訪れるもの」と言われてるんだから、許すために何かをしなければならないというのはおかしくない?「憎まなければいけないはずなのに心は勝手に許してしまっている」というのがこれまで描かれた愛なのだから、ウィルを食べなければいけないという論理はこれまでのハンニバル像と矛盾すると思う。ただこの理屈だとミーシャを食べたことが彼の出発点と言う話と矛盾するか。ミーシャ=無礼者になってしまう。逆に「食卓を共にする」という意味ではジャックとかアラーナとか他のゲストにも食べさせてるから、一緒に食べる側になることがすなわち愛の証と言うわけでもないか?むしろ何も知らずに人肉を上手い上手いと食べる滑稽さを見て悦に浸っているのだとしたら、「理解したうえで」という部分が重要なのか?脚本的に「許す=愛」なのはわかりやすかったけど、ハンニバルにとって「許す=食べる」なのか「愛=食べる」なのかは最後までわからなかったな。原作では「死んだ者がいた場所にミーシャが座れる場所を作る」みたいなことを言っていた気がするけどドラマではその話はしてないし……。

 『春』の前でウィルがハンニバルと再会して「お互いが離れて生きていけるかどうかだ」とか言ってたけど、その問いかけが必要なのは主にお前の方だからな!?と思った。ハンニバルの方は「君と一生一緒に居ることになってもこの瞬間を思い出すよ」とか全力で口説いてきてるというのにお前は……。

 メイスン周りはクラリスに対しては「ハンニバルも”救うべき羊”に含まれるのか?」という問いかけとして意味があったと思うけど、ハンニバルにベタ惚れのウィルには正直そこまで重要でもないと思った。ハンニグラム的に最高だったのはその後で、豚の餌にされそうになっても頑張ってウィルを助け出したのに「犬たちが恋しい。あなたは恋しくない。見つける気もない。どこで何をしているか知りたくないし、あなたについて考えたくない」とガチ目に振られたハンニバルがしょんぼりしたと思わせてからの「私とどこで会えるか知っていてほしい」から捕まることにしたところ。まるで諦めてない!ガチすぎる!熱烈すぎる!

 その後のレッドドラゴン編はほとんど原作通りなんだけど、正直私は原作だけだとそこまで面白いと思わなくて、ハンニバルは刑務所に居るから出番は少ないわこれまでのシーズンでの見どころだった芸術的な死体の飾り付けが全然見られないわで最終話以外はかなり退屈だった。レッドドラゴンくん自体も小説の独白で見るとまだ迫力があったけど、視覚で見るとすごくダサいごっこ遊びにしか見えない。どう見てもドラゴンではないのに妄想乙って感じ。それに女と寝たら”真の愛”に目覚めて、竜になるという自分の願望だったはずのものを「彼」とか言って無垢な自分の人格と切り離そうとしたところもダサい。それになりたきゃ勝手になればいいのに世間に認められたいみたいなところもダサい。祖母のエピソードが完全に削られてイメージ映像で一瞬出るだけになってたので「むしろそこが一番の見どころだろうが!」と思ったんだけど、そこを詳細にやってしまうとハンニバルとウィルの軸からブレてしまうから思い切って削ったのかもしれない。

 でもこれまでの積み重ねがあるせいで原作と違ってウィルがハンニバルをきっぱり振って妻子も作ったくせに利用だけはしようとするだいぶ酷いやつになってたのは笑った。しかしそんな仕打ちをされても「君は家族だ」とか言い始めたハンニバルには度肝を抜かれたね。「誰と誰が!!??」となった。そこからウィルの新しい家族に赤い竜をけしかけて「ウィルは家族だけどウィルの家族は私の家族ではない」と殺そうとするハンニバルがもうすごい。清々しいほどウィルしか見えてない。「ウィルの大切なものだから大切にしよう」みたいな発想は一切無い。結果的に殺しには失敗したけど、「ウィルと暮らす限り似たようなことが起こる」という疑心を植え付けて今まで通りには暮らせなくさせたという……。怖……。一番救いがたいのはここまでされてもウィルはハンニバルに幻滅できないというところなんだけど……。

 ベデリアとウィルの会話で「君は青髭の妻だ」はわかる。つまり「ハンニバルについて常人が知らないことを知っている君ならわかるんだろう」という意味。その後のベデリアの「私が最後の妻になって生き残ってみせる」もわかる。でもそこから急にウィルが「ハンニバルは僕を愛してるのか?」って何?どんな脈絡?もしかして「あなたも花嫁よ」の時みたいにあなたも青髭の妻の一人でしょうってこと?でもあなたは先に死ぬ方で私が最後になる的な?しかしこういう台詞が出た時に「愛している」だけだと家族愛と言い張る勢が必ず現れるものだけど、ここでベデリアがご丁寧に「日々あなたへの飢えを痛みのように感じ、姿を見るだけで満たされるという意味?そうよ」と断言してくれているから恋愛以外に勘違いしようがない(まずハンニバルにただの家族愛なんて温かい感情があるとは思えないけど)。ベデリアってハンニバルに惹かれててウィルに張り合おうとしてる節があったけど、その一方で二人の恋をめちゃくちゃアシストするようなことを言うんだよね。ウィルちゃんがここでようやくハンニバルの愛に気付いてやっと進展するのかと思ったら「彼を捕まえさせるつもりはない」とか言い出して驚愕。「彼と共に生きられず、彼無しでも生きられぬ」だけならまだわかるけど、そんな自分のために殺人鬼を世に解き放とうとしてるんだからそりゃべデリアも怒るわ!ハンニバルが殺しに行くかもしれない相手に「覚悟しておけ」とか言ってて、アラーナも対象かもしれないのにマジで言ってんのコイツ!?と思った。チルトンが精神異常と嘘を書いてまでハンニバルを死刑にさせないようにしたのがなぜかはわからないけど(研究材料?)、今のままでもハンニバルは精神病院に一生収容されるみたいなのにそれもだめなのか?FBIが竜を殺したついでにハンニバルも殺すつもりなのは常識的に考えたらそうでしょうねとしか思わないけど、ウィルは協力してますというツラをしながら内心では逃がすつもりなのがめちゃくちゃ反社で笑った。

 シーズン3は退屈だったと言ったけど、そんな不満は最終話を見たら全てがどうでもよくなる。初めて見た時はあまりの満足感と衝撃で心がその体験を受け止めきれなかったぐらいだった。竜を殺すシーンが完全に二人の共同作業・ケーキ入刀。ウィルに抱きしめられたときのハンニバルの幸せそうな顔!!どんな言葉もこの気持ちを表現できない。ただただ圧倒的に”満たされた””完成した””これが答えなんだ”というああ当的な幸福感が押し寄せてくる。最後に抱き合った後にウィルの方から海に倒れこんだように見えて、彼は最終的に心中を選んだということだと思うけど、その気持ちはものすごくよくわかる。今この瞬間最高に満たされて欠けたものなど何もないからこそ「ああもう死んじゃってもいいかー」と自然に受け入れられるというか……。この瞬間を最後に出来たらどんなに幸せだろう、みたいな。本当にこのシーンはBL史に残る伝説的名シーンだと思う。一生見返せる。

『Tales of ARISE』感想

 私は生粋のテイルズ育ちなので、本当に久々にバンナムが新作を作る気を起こしてくれたという事実が嬉しくてやったけど……う〜〜ん……なんというか……使い古されてるなあ……という感じ?特に最終戦付近はどこかで聞いたようなやり取りばかりで全然身が入らなかった。ヴォルラーンに対して繋がりがどうのこうのとか赦し合うのがどうとか完全に「もう見た」すぎて……。私自身もう世界を救うとか絆とかいう話に魅力を感じなくなってきたという要因もあるとしても。

 世界観はすごく興味を惹かれる構成で、テイルズお得意の「種族間の対立」から少し変わって完全なる支配・被支配の関係を描いていたのは新鮮だった。そこからアルフェンの出自やシオンの秘密、領戦王争、レナの王、星霊術の謎を追いかけていくのはとても楽しかったし、各領独特の自然や街並みや領将たちの多彩さにワクワクした。

 ただ世界観がしっかりしている一方で、パーティーメンバーが信頼し合うまでの描写が唐突に感じる時があった。「そこでそんなに感情的になる?」とか「今そこってそんなに問題かな?」というような小さな違和感が積み重なって彼らの感情についていけないことが多かった。特に光の国でのジルファ・ロウ周りと、地の国でのキサラのブチギレ金切り声と、風の国でのリンウェルの憎悪・復讐の話と、アルフェンがシオンシオンとグイグイ行き始める辺りには「???」となってしまった。

 まず光の国でジルファが死ぬ、そこまではまあいい。シオンのいう通り、戦いなんだから誰かが死ぬことはあり得る。ただ私としてはジルファとまだそこまでの付き合いではないと思っていて(ビエゾ戦の時は別行動だったし)、「話のわかる人だしこれから仲良くなれそう」程度の気持ちだったのに、それで急に死んだと言われてもなんだかな。「壁を壊せ」が今作のテーマっぽいからそれをジルファに言わせることで導き手としての役割をもたせたかったのはわかる。ダナの人々はレナに虐げられることが当たり前で、それを覆そうなんてほとんどの人は思いもつかないという世界だったから、「奴隷に甘んじるのではなく自分の力で戦える」という選択肢をアルフェンにとっておそらく初めて示してくれたのがジルファで、だからこそアルフェンがその死を強く悲しむのはわかる。そこまではプレイヤーの人生経験との乖離があるから仕方ないとしても、アルフェンの悲しみに対してシオンは怒りすぎじゃね?となって(まあシオンがキツイことしか言わないのは事情があるからだけど)、アルフェンがもう戦うのやめるって言ったわけでもないのにビンタするほど?と戸惑いを覚えてしまった。それが彼らにとっては信頼エピソードということになっているみたいだけど……。というかビンタで目を覚まさせるとかいう古臭い展開が単純に好きではない……。

 それでロウの方も自分でジルファを売った結果彼が殺されるハメになったことは間違いないのに、結構すぐに「おのれガナベルトォ!」にシフトしたように見えて、「は?間接的にはお前のせいだけど?」と私の脳内でハテナマークが乱舞してしまっていた。光の国突入時点の私にとって2人は知り合って少しのおじさんとほぼ初対面の息子さんでしかないのに、その程度の関係で「親父ィィィィ!」という場面を見せられても「なんか盛り上がってんな〜」としか思えない。ロウが加入した時は新しく仲間が増えたことを喜ぶべき場面だったんだろうけど「お前のせいでもあるんだから仲間面しないで?」としか思えなかった。少なくともガナベルトを倒すまでは「申し訳ないけどケジメの為に協力してくれ」ぐらいの距離感にしてほしい。その後もちょくちょくロウがそのことを話題に出して反省するフェーズが挟まれるのでずっと気に病んではいるんだろうけど、そういうのは加入する前にやってくれない?決して全体の流れとして矛盾しているわけではない、ないけどなんか……速いのよ全てが……。そして反省するのは大歓迎なのだけど、今度はロウメインのスキットの7割(体感)でジルファの話が入って、まさかのエンディングまで事あるごとに「ジルファが〜」「ジルファだったら〜」と擦られ続ける。君たちには悪いけど私にとってはそんな大した人物じゃないし、その息子だからというだけでロウへ親近感をもてるほどの関係じゃなかったんだって。制作側の、ジルファを重要人物にしたいという熱意が先走りすぎているからそういう時キャラの感情に全然付いていけない。ロウがどうのこうのよりも、私は紅の鴉の人達が自分達のいないところでジルファが死んでしまった事実にどんな反応をするのかと心配したのに、こっちは誰も特に嘆き悲しむでもなく「気にするなよ」という対応だったことにも困惑した。流石にロウにとって都合が良すぎない?結局ジルファの存在は作劇上ロウやアルフェンの動機付けをするための舞台装置にしか見えなかった。

 次に地の国の話。この章自体は結構好き。悪の親玉と見なされていた領将が実は権力に無頓着で人々に慕われる好人物だとわかり、倒していいのか躊躇する展開になるのも、実はその人が掲げた「共存」という高尚な理想が建前だったという展開も面白かった。突然融和政策を進められたことでレナ人の間でも水面下では分裂が起きていたというところもリアルで良かった。良かったんだけどテュオハリムが真実を告白した時のキサラさんの豹変ぶりがあまりにあまりで正直ドン引きしました。そんな「イイヤァアアアア!!エアアアア!!」みたいな金切り声出さなくてよくない?いやお兄さんが目の前でドロドロの物体になったと考えたら無理もないかもしれないけど、これもロウたちの時と同じでキサラさんともお兄さんともこっちは出会って2日ぐらいしか経ってないのよ。そんな状態で理性的な女騎士だと思ってた人が突然発狂してみなさいよ(今思えばその少しの間でも兄さんに対する反応はちょっと過剰だったけど)。彼女らがどれだけテュオハリムに心酔していたかなんて知らないからまた「なんか盛り上がってんな〜」状態。しかもたとえ実態がどうであれテュオハリムは「レナとダナの平等」を口先だけではなくちゃんと統治で結果として示していたじゃない。ただ人の苦しみを見たくないだけなら自分だけ王宮に閉じこもって見えない聞こえないを貫き通すこともできたのに実際に行動している(これは章の最後でアルフェンも言っている)。それで現実に人々の苦痛と絶望が減って豊かな暮らしができているなら内心がどうとかそんなに重要なことかな?キサラさんは目玉をギョロギョロさせながら「殺す!殺す!」と喚いていたけど、彼を殺したところで絶対に今より国が良くなるはずがないどころか、拠り所を失った民は絶望の日々に逆戻りじゃないの?テュオハリムは領将なのに知らないことが多すぎたという点は悪かったけど、流石に殺されるほどの罪は犯していない。キサラさんがその発狂タイムを「二度と顔を見せないで」で締めくくった時は「あっ、この人その結果民がどうなるのかとか全然考えられないんだな……。」と私の心が完全に彼女から離れてしまった。「近衛兵まで勤めながらその程度の視野の狭さなんだ……。」って。終盤ではさすがに思い直したのか「あなたのおかげで助かった人々もたくさんいますよ」とか言うようになったけど、あの時のことを後悔したり謝ったりするフェーズがないのでいつのまにかシレッと鞍替えされていたように感じた。なあなあにしないで一度真剣に謝ったほうがいいと思う(テュオハリムもなんか「君にも私を殺す資格があったな」とか言うけどそれだけはない、マジでない)。彼も彼で重篤PTSDもちというか、悲鳴を聞くだけで星霊力が大暴走ってよくそれで今まで領将やれてたな!ここはゲームの構成上領将との戦闘をしなければいけないノルマがあるから無理矢理暴走させたように見えた。彼のトラウマの原因となった出来事に関しては、相手が原因を作ったとはいえ親友を殺してしまったことに対して「あいつが悪い」と言うのは言い訳のようだし、フィアリエを更なる絶望に落とすだけだから言えなかったという心理は仕方がない。その結果悲しいすれ違いが起きてしまったのも仕方がない。ただ終盤でその恨みがすべて誤解から来るものだったと知った後も、フィアリエがそれまで彼を散々罵ったことを謝らなかったことに驚愕した。こいつらもしかして謝るという行為を知らんのか?

 でも領将を殺さないままでメナンシアの解放にどう決着をつけるのかなと思ったら、「もう平等の種は人々の中に根付いているから導く者がいなくても彼らだけでやっていける」という締め方になっていたのは素直に良いと思った。ジルファがリーダーであっても支配者にはならないために「自分で考えろ」と逐一言っていたところといい、「希望を盲信するのもまた奴隷の一種だ」というメッセージを随所に散りばめてくるのは良かった。ただ要所要所での作りたいシーンが先に決まっていて、そのポイントを通り抜けさえすれば「そういうこと」になってるかのようなぎこちなさがあった。

 私が一番納得いっていないのは風の国でのリンウェル関連のこと。リンウェル自体のことはパーティーの中で2番目くらいに好きで彼女に文句があるわけではない。ただ復讐をロウが止めた理屈だけは全然理解ができなかった。実際にリンウェルが言っていたように、ガナベルトを殺した時と何が違うのかをちゃんと説明してほしい。シオンの言う「憎悪を解消することだけが目的になるとそれが果たされた後の生きる目的を見失ってしまう」という部分は理解できた。つまりロウがガナベルトを殺した(RPGはどう見ても殺しているのに倒したと表現する場合があるのであえて殺したと書く)のは明日へ進むためだから良いんだと。でもその後いざアウメドラを殺すか殺さないかというシーンでリンウェルが急に「生きて罪を償わせる」とか言い出した時は「は?何を言ってんの?」と思った。償わせるって何を基準に?誰がどうやって?法で?どこの法で?レナの法に「奴隷をドロドロにしてはいけない」と書いてあるとは思えないけど……。ダナの法で領将を裁くなんてもっと無理だろうし……。レナの支配が無くなって共存社会もしくはダナの社会の秩序が機能するまで待つつもり?どうやって?いや方法なんてぶっちゃけどうでもいいけど、私が一番腑に落ちないのはなんでガナベルト(ビエゾは星霊さんの介入があったから事故と言い張るとしても)は殺して良くてアウメドラはダメなのかってことだよ。法が機能しない場合でも人として許してはいけないラインはあると思うけど、それで言うならガナベルトの方が人をドロドロにしていないだけまだ良心的な方だろ?「生きて償うのが一番の罰」とかいうお決まりの理屈をもってくるかもしれないけど、その罰が機能するのは人々の間で「犯してはいけないライン」がちゃんと共通認識になっている場所だけだろ。今更ダナ人から白眼視されたところでレナ人から何か言われない限りアウメドラはノーダメージだし、ほとんどのレナ人はダナ人がどれだけ苦しもうが「それはそういうものなんだから仕方ないんじゃない?」と思ってるよ。本当にここだけは意味がわからなかった。リンウェルの手を綺麗でいさせるための詭弁にしか見えない。まるでどこかからテンプレを引っ張ってきたかのような会話。なんだ「生きて償わせる」って。刑事モノか? 

 文句が多めになってしまうけど一番魅力が無いと感じたのは主人公のアルフェンかもしれない。熱くていい奴なのは確かだけどなんというか「主人公のテンプレ」という印象で引っかかるものが何もない。仲間に対してかける言葉もどこかで聞いたようなものばかりに聞こえる。例えるならSNSで誰からも大きな反感を持たれない程度に上手く立ち回りつつたまに意見っぽいことを言う人って感じ。自分でも今までの主人公と何が違うのか説明しづらいけど、彼が培ってきた経験とその熱い性格に繋がりが感じられない……のかな。奴隷だった過去から自由の大切さを知る、という理屈はわかるけど奴隷をやめる前と後で特に性格に変化があるようには見えない。まだ仮面がある頃に人に対して励ますようなことをバンバン言えていたのは、記憶が無いゆえに自分には悔やむような過去が無くて前だけ見ていればいいという一種の気楽さがあったんだろうと思う。でもいざ記憶を取り戻して「実は元被検体で大量殺人の過去がありました」とわかった後すら、一時的に落ち込んだだけで特に変わらなかったので結構な肩透かしを食らった。以前より言動が少し慎重になるということもない(他に追うべきことが多すぎて腰を据えて考える機会がなかったのもある)。おそらく大イベントがあっても総合的には全く変化していないように見えるから軽く見えるんだろうな。私の方も300年前と数字だけ示されても実感が湧かないし、レネギスの人々がどんな様子で暮らしていたかも全く知らないので、「かつて多くの人を殺したんだ!俺の手は汚れている!」とか急に言われても全然響かなかった。言っちゃあ悪いけど過去に大きな罪をおかしてしまった主人公とか今更珍しくもなんともないし……。300年前の人間だというなら「今の人はこう思ってるけど実は300年前はこうだったんだよ〜」とか「この場所知ってる!」などのエピソードがあれば少しは地に足が着くのにマジでない。何もない。

 一番わからないと思ったのが彼のシオンに対する過剰な情熱で、彼女がヴォルラーンにさらわれた後に彼が「シオンはいつも俺を励ましたり叱ったりしてくれた。いてくれるのが当たり前だったんだ。」とか言うんだけど、その時点ではそんなに励ましたことあったっけ?やっぱりあのビンタが重要な絆エピソードとしてカウントされている?旅の道中では主にシオンがアルフェンの歩み寄りを悪いようにばかり解釈して「私に文句があるの?」みたいな態度ばかり取るからずっとギスギスしてなかった?シオンが本当は人を思いやれる子なのは治療イベントやらで私にももちろん理解できてはいたけど、そうは言っても冷血ではないというだけで一般的な優しさの範囲に見えたので、アルフェンがそこまでシオンシオンとうるさくなる理由としては弱い気がした。記憶が戻る前なら「ネウィリの面影を見ている」で説明がつけられるけど、そこも記憶が戻った後何の変化もなかった。「シオンをネウィリの代わりにしているんじゃないか?」という疑問が一度くらいは過ぎりそうなものなのに。そういう色々な違和感のせいでシオンが荊の真実を告白してアルフェンがみんなの前で熱く抱きしめる感動シーンにもいまいちノレなくて、「ハイいつもの~私が死なないと世界が滅びるやつ~」というテンションにしかなれなかった。ネウィリのことを大切にする理由ならわかるので、彼女の救ってくれた命と託してくれた未来のために戦うと言ったところはすんなり受け入れられた。

 シオンの側も1回目のヴォルラーン戦直前まで「要らぬ気遣いは迷惑よ」とまで言っていつもの険悪な空気をさせていたわりに、そのヴォルラーンの攻撃からアルフェンを庇ったときはかなりびっくりした。でも彼女の対応は生育環境のせいで人に気遣われるという経験が皆無だったからこそテンパっていたのもあろうし、どれだけ仲良くなっても自分はどうせ死ぬからと投げやりになっていたと思えばわからなくもない。日頃憎まれ口を叩いていても本当に相手の命が危なくなったら身体が動いてしまった、ということも現実的にはあるし。欲を言えばその心情のぐちゃぐちゃ具合を逐一画面上で描写してくれてもよかったけど、それが無くても違和感というほどではなかった。彼女がアルフェンに心を許すに至った理由は、どれだけ遠ざけようとしてもお構いなしに関わってやると宣言されてしまってはもうわざわざキツイ態度を取ること自体が無意味になるから、という点はわかりやすかったと思う。自分のことを仲間だなんて言ってくれた人は初めてだとも言っていたし、シオンからアルフェンへの好意に疑問点はなかった。

 

 悪いところばかり書いてしまったから良いと思ったところも書こう。ヴォルラーンを倒しに行く辺りで「終盤っぽい空気になったけどまさかこのまま終わったらどうしよう……。でもテイルズあるあるの『大きな戦いを終えて〇ヶ月後』って展開にしてくれるよね?でもオープニング映像に出ていた人はもう全員登場しちゃったしな……。」なんて危惧していたのだけど、まさかオープニングを2つも作ってくるなんて度肝を抜かれたわ!まあ流石にレネギスとレナに一度も行かないで終わることはないと思ってたけど、エクシリアの前例があるので行くだけ行って中身はスカスカの街だったらどうしようかと心配しちゃった。テイルズは好きだけどそれと同じくらい過去の所業に対する信頼のなさもあるから……(結局愚痴)。 レネギス自体が侵略のための中継地点でしかなく、街が1つしかないので行けるところはそんなに多くなかったけど、ストーリー的にうろうろ歩き回るような状況でもないし街で各領将を支持する人から彼らの人物像について聞けるイベントがあったのでやばいくらいにワクワクした。ダナから見たら悪鬼のような領将たちにもそれぞれにレナとして生きてきた人生や信念があって、彼らのおかげで助かっている者たちも沢山いたということがわかるのは深みがあって良い。 

 

さながら宇宙世紀のような光景も見られたし

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 あとメニュー画面のイラストがストーリー進行に合わせてガラリと変わる仕様なのがめちゃくちゃオシャレで感動した。今までもセーブ画面でパーティーメンバーが徐々に増えていくことはあったけど、構図も色合いも丸ごと変えて状況にバッチリ合わせてくるのはすごい。

 それと最初にも書いたけど、各領の風景や建造物が凝っていて歩くのが楽しかった。特に水の国の首都はアビスのグランコクマに似ているようで全く違う、住むための街ではなく権威を示すための街という説得力のあるデザインでよかった。

 

スクショだと色合いが変わってしまうけどプレイ画面は1.5倍くらい色鮮やかなのよ

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床下に水が流れているのが本当に綺麗

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 メニューから料理が作れなくなった代わりに野営システムになったけど、私はもともと戦闘ガチ勢じゃなくて料理はあまり使ったことがないのでこっちの方が「仲間と旅してる感」が感じられて良い。

 それとフクロウが色んなところに出てくるのが珍しくていい。猫とか犬とかはポピュラーだけどフクロウはなかなか無い。漆黒の翼のリーダーが黒いフクロウを大切にしていたというエピソードもよかった。

 

出会ったフクロウが集まってくるフクロウの杜がとっても可愛い

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 サブイベントで好きなのは「超!絶!美味大国!」

 一番好きなキャラはテュオハリム。レナ人の中で権力より音楽や美術の方が大事と言う人は相当珍しいという異端な感じもいいし、そういうズレた性格だからこそメナンシアでの統治に繋がり、さらにその経験があるからこそ新たな時代のレネギスを背負う存在になれるという流れが素晴らしかった。それでも欠点がないというわけではなくて、消極的ゆえに人との軋轢を生んでしまったり、レナ人としての当たり前を生まれた時から教え込まれているのは他の人と同じだから無意識にダナ人を下とみなした発言をしてしまったりするのがリアルでいい。あとちゃんと謝れる(これ重要)。私は彼とリンウェルとの絡みが好きで、リンウェルが魔法使いゆえに人から酷い言葉を投げかけられたら庇ってくれた話とか、いつか2人で遺物博覧会を開こうと相談している話とかがすごく良かった。

絵面が可愛すぎる

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 これも最初に書いたけど世界の謎を紐解くのが一番楽しかった。真相に迫ったと思ったら次から次へと謎が増えていくので頭が忙しかったけど、その時開示されている情報を一生懸命整理して推測していくのが面白かった。「領将のそばにいつもさりげなく控えていた赤い人が実は本当のレナ王説」を2割くらいの真剣さで推していたので予想がほぼ(レナ王ではなかったが)的中していたことが超嬉しかった。あと「レナ本国の星霊力は既に枯渇していて実は誰も住んでいないのではないか説」も「王に選ばれた領将は決してそのままの自分として王になれるわけではないのではないか説」も。でも我々がレナ人と思っていたのは後から作られた存在で、本当のレナ人は異形の存在だったというところは予想外だったな。ダナの星霊術師がいる時点でレナ人との遺伝子の違いがそこまであるわけがないから、2つの人種は元々同じ星で暮らしていたんじゃないかとまでは考えていたので惜しかった。

 

 戦闘面では、術技を次々と簡単に出せてブーストを挟めば連続ヒットを狙える点が前作の正当進化という感じ。秘奥義を回避できるようになったことが新鮮だった。そうなると強敵感は少し薄れてしまうが、考えて戦えば勝てるという面白さがあると思う。SEがドパンドパンと飛び交うのは気持ちがいいがエフェクトが渋滞してどれが味方の術だかわからないという弊害もあった。しかしスピード感と言えば聞こえはいいがいくらなんでも速すぎる時がある。緩急の緩がまるで無いので常に忙しい。ブーストストライクはほぼ毎回の戦闘で使うためにスパッと終わらせたいのはわかるし実際スパッとしてくれた方がありがたいのだけど、単純にカメラが近すぎたり対象がカメラの中央にいないことが多いので何が起きているのかわかりづらい。それに秘奥義はブーストに比べて出す機会は少ないのだからあんなに速くしないでゆっくりめに見せてくれていいのにと思った。この点はベルセリアで良くなったのにゼスティリアに逆戻りしている。演出もブーストストライクの方は新鮮なものが多くて良かったが、秘奥義は「いつもの」と感じるものの方が多かった。私のお気に入りは衝破十文字とかテュオハリムの第一秘奥義とか。特に衝破十文字は今も昔もシンプルイズベストの体現のような技で惚れ惚れする。

   それとエネミーの種類がいつもより少ない気がした。属性ごとの色違いばかりで実際の動きは同じなので「またこいつか」と思う。設定上はレナが人為的に作ったものなので種類が少なくて当然なのかもしれないが、単純に戦っていて新鮮味が無い。星霊力の楔?で大型エネミーが出て「おおっ!」と思っても流れとしては雑魚敵を倒す→コアが無防備になるからタコ殴り、というワンパターン。イフリートさんなんてイベントシーンのワンパンで勝手に倒される始末。

   最後にまた愚痴を言ってしまうけど、パーティーが最終戦前で仲良し2人組×3になるのはいつものことだし6人としての仲間意識とは別に個々で付き合いやすい組み合わせというものもあるからそこは良い。でもその2人を全部男女の恋愛関係にするのはマジでやめてほしい。1つくらいは「ただ気が合う」という組み合わせでも良いだろ?それかせめて片想いとかさ……。恋人はパーティーの外にいるとかさ……。ロウ→リンウェルは露骨だけどリンウェルはそんな気は無いのかなと思ったらサブイベで頬染めてるし……。キサラがテュオと愛称で呼ぶだけならまだ友情や信頼、同じ国のために志を共有する同士として、と取れなくはないのにそれにリンウェルが触れちゃいけないみたいな空気出すのもマジかよと思ったし……。なんで仲間として絆が深まった、で終わらせてくれない?全員が示し合わせたかのように綺麗に割り算されるのは気持ちが悪い。

   あと温泉イベの覗き関連まだやってんのか……と呆れた。昔そういう話が軽いギャグ扱いだったことはもうどうしようもないが、未だにそれを引きずって「シリーズ伝統だから!」と必死になって守ろうとしているゴミみたいな感性が何より残念だわ。そのシーンになるとテュオハリムが急に「男のロマンが〜」とか言い始めるのキャラ的におかしいしスタッフのおっさんが乗り移ったのかな?と思った。

 

    いろんな人の感想を巡っていたら当然というべきか、ゼスティリアのトラウマを語っている人がちらほらいたので当時の記憶が蘇ってきた。確かにあの、ゲームの皮を被った不快な悪夢に比べればアライズは天国に見える。ここまで散々書いた不満点もゼスティリアの前では霞む。あれを経験してしまうとちゃんとした物が出てきてくれただけでもういっか!という気になってくるからすごい。私はベルセリアは傑作だと思っているけどなぜかあんまり知名度ないっぽいし……。アライズは何かが大きく破綻しているというわけでもないし所々で気合が入っているなあと感心するところもあったからシリーズを新生させるという意気込みは感じられた(イラストレーターも岩本さん一本になってたし)。ただやっぱり全体的な厚みが足りなくて熱く燃えるようなところがあんまり見つからなかったというのが私の正直な感想。

空知英秋『銀魂』の話

 完結した直後はあまりに胸がいっぱいで放心してしまったけど、また読み返していたら色んな感情が蘇ってきたので一度まとめてみたくなった。

 自分がいわゆるオタクであると自覚し始めた辺りがちょうどアニメ銀魂全盛期で、知り合いのオタクの女の子は高確率で銀魂式ツッコミを習得してる世界で育った。もはや成長期を銀魂と共に走ってきたと言っても過言ではない。まああまりにしょーもなさすぎる下ネタとか、主にドラクエをやったことがない人に不親切なパロディばっかり繰り出してくるところとか、人情話が大体最後の方で「こいつは不器用なだけでそんな悪いやつじゃなかったんだよ」展開になるワンパターンなところとかには今も昔も好きではないんだけど。

 それでもキャラクターたちがちゃんと「生活している」というか、普通なら描写しないであろう生々しさまであんなに具体的に描く漫画は私の知る中では銀魂以外に無い。大抵の漫画での「悪い面を描写する」っていうのは内面の話であって、ヒロインがゲロ吐いたり主人公がウンコする場面を映したりキャラが痔になったりマヨネーズまみれになったりしないでしょ。いや別にしなくていいんだけど、銀魂はかぶき町で「生きている」人たちの漫画だから、そういう間抜けな場面がわざわざ描かれていることで、漫画の中であっても彼らがリアルな人間と地続きの存在だという説得力になっている。あるキャラがカッコいいシーンを見せたと思えば次のページではもう誰かからのかかと落としで地面にめり込んだりしているし、真面目キャラでもクソ真面目にパトリオット工場とかやっちゃったりする。高杉レベルのシリアス枠はそこまでぶっ壊すことはしないけどヤクルコ大好き話とか銀時とのレベルの低い口喧嘩とかして、完全にとはいかないまでもなるべく平等に全キャラを地に落とすシーンを作っている。そんなのやろうと思ってもここまで徹底することはなかなかできることではないと思う。この漫画は「無様に這いつくばってでも生き続けてやる」的なことを話の結論にすることが多いんだけど、そんなありきたりなセリフでも数々の積み重ねがあるおかげで「無様」の説得力が違う。銀魂の場合は本当に文字通りの醜態というか、這いつくばるだけでは飽き足らず身体から出せる汁は全部出すとかそんなレベルだから……。

 空知先生が20巻ぐらいで読者から言われた「銀魂がどこに向かっているかわかりません。テーマのようなものはあるんですか?」という質問に「今のところは僕にもわかりませんが、完結した後で『ああこんな話だったんだな』と思ってもらえるんじゃないでしょうか」と返していたのだけど、最後まで読んでみて私は「何もかも失った銀さんがもう一度自分の居場所を得る話」だと思ったかな。こう書くと単純に聞こえるけど、銀さんがいろんな人と関わって背負って背負われてきた積み重ねを75巻分読者も見ているから、彼らを守りたいと思う銀さんの気持ちを言葉以上に実感として理解することができる。そういう気持ちをもう一度抱かせてくれる人々に出会えたことにどれだけ銀さんが救われたのかがわかる。

 しかしつくづく思うのは、「もう二度と背負うまい、背負わせるまいと思っていたはずなのにいつのまにか背負っている」と言うけど、ただ流されるまま生きてぼうっと突っ立っているだけではここまで強固な絆は生まれたりしないということ。銀さんの周りに彼らのような一本芯の通った人々が集まったのは、紛れもなく銀さん自身が彼らの大切なものを守るために行動してきたから。離すまいと手を伸ばし続けてきたからこそ、その手を握り返してくれる人たちと繋がってこられたんだと思う。

 そうしてみんなの大切なものを護り続けてきた銀さんが最後に自分自身の願いを叶えに行くという最終章の展開には感極まって涙が止まらなかったし何度読み返しても毎回泣いてしまう。その願いが松陽先生を解放することなのにも泣いたし、高杉くんを失いたくないという気持ちをずっと抱いていることにも泣いたし、それは俺のわがままだからとみんなを置いて行ったことにも泣いたし、最後に松陽へかけた言葉が「俺、こいつらと万事屋やってんだ」なことに銀魂の全てが詰まっていて泣いた。誇張でなく目の前が全く見えなくなるくらい泣いた。松陽が「侍」の在り方を教えてくれたおかげで今の銀さんがあるのだから、そんな相手にかける言葉として「俺は元気でやってるよ」以上のものはない。あのシーンを読んだ瞬間、銀魂を好きでいて本当に良かったと心から思った。

 

 好きなキャラクターとシーンの話

・沖田くん

 中学生の頃から沖田くんがずっと好きだ。昔はドSをカッコいいと思っていたのと最強厨だった(今もだけど)のと顔面が好き(今もだけど)という理由が大きかったが、今は違う見方からも見られるようになって、さらに彼を好きな理由が増えている。

 一番好きなところは、人を斬ることに快感を覚えるタイプで一歩間違えれば鬼になってしまえる素質を秘めているのに、ミツバさんや近藤さんや土方さんのおかげで奇跡的に警察をやれているというところ。『将軍暗殺編』で姫様を守る姿が最高にカッコよかったし、人斬りの魂が巡り巡って弱いものを守るために刀を振るうことになっているという運命のいたずら感がたまらない。それと『さらば真選組編』で真選組が解散させられた後も頑なに制服を着続けていたところは健気すぎて震えた。志というよりは近藤さんのために剣を取っていた沖田くんにとって、真選組でなくなるということは自分の存在意義がなくなるということと同義なんだよね(一応自分なりに護るべきものの基準をもってはいるんだけど)。こういうところを見ると「Sだからこそ打たれ弱いの!」の意味がじわじわとわかってくる気がする。

 土方さんに対する複雑怪奇な愛情ぶりも大好きなところ。まあミツバさん回の「大事なもんのなかに土方も入っちまってる」という言葉でもう答えは出ているんだけど。でも気に入らないというのも間違いなく本心で、その中には大好きな姉上を取られて悔しいという気持ちもあるし、何で姉上の気持ちを受け入れないんだという苛立ちもあるし、さらには2人がくっつかなくてほんの少しホッとしている自分への苛立ちもあると思うんだよね。あとは単純に人間としての器で勝てないとも感じているかもしれない。土方さんの正しさを理解しているからこそ、その正しさにムカついている。監禁騒動の回の殊勝な言葉の数々は、演技とは言っていたもののほぼ本心だったんじゃないかと私は勘ぐっている。あとこれも推測だけど、本当に土方さんが副長を降りるなんてことになったら誰よりも落胆するのは沖田くんだと思う(『真選組動乱編』ではあんな感じだったけど妖刀の影響にどこまで勘付いてたのかは謎だし)。もし自分が副長になれたとしてもいい気分なのは一瞬だけで、すぐに以前の真選組が恋しくなるんじゃないか。

 しかし何より度肝を抜かれたのは、『さらば真選組編』で近藤さんの命が危ういという極限の状況の中「近藤さん助けるのも見捨てるのもアイツ(土方)と行く」と言い切ったシーン!あれはヤバかった……。今まで散々命を狙ってきたのにそんなの……反則じゃん……。憎まれ口を叩いていても近藤さんと真選組を思う気持ちは完全に一緒だとわかっているからこそできる発言。結局お前ら超仲良しじゃん……。

 あと銀さんと土方さんの入れ替わり回であっさりトシさん(中身銀さん)に懐いてたのがよかった。土方さんの「俺には全く懐かなかったのに」とかいう言葉のチョイスも何かかわいかったし。沖田くんと銀さんのゆる〜い仲良し関係が私はすごく好きなんだけど、沖田くんにとっての銀さんは土方さんと一部似てはいるものの、それ以外はちゃらんぽらんすぎて全く似てないという存在なので、いつも土方さんに抱いている「こいつには負けられねえ」みたいな感情が湧かないから肩肘張らずに懐けるんだと思う。要は「ムカつかない土方」。でもムカつかない土方なんて土方じゃないから土方にそうなって欲しいわけじゃない、みたいな。銀さんも何だかんだ説教したがりな部分があるのに沖田くんに対してはあんまりしないのは、彼を叱るのは土方さんの役目だからという認識だからなのではないかと私は勝手に思っている。

 

・土方さん

 『バラガキ編』での姿が本っ当にカッコよくて、あれ以来私の中でこの人に対する憧れのような気持ちがデフォルトになってしまった気がする。自分のこととなると何にも言葉が浮かんでこないのに人のためとなったらあんなに丁寧で情に溢れた手紙を書いてくるなんて反則でしょうが……!

 土方さんの一番いいところは真選組を守りたいっていう気持ちに素直なところ。この漫画恒例のツンデレのくせに近藤さんへのまっすぐな想いは全然隠そうとしないのが良い。

 土方さんが銀さんに恩義を感じるのは今まで何度も何度も真選組の危機を救ってくれたからだと思うけど、銀さんから見て土方くんはどう見えてるのか?と考えてみた。おそらくだけど、初めて斬り合ったときの理由が「近藤さんの名誉=真選組を守るため」だったのが銀さんの琴線に触れたんじゃないのかなあ。土方さんに限った話ではないけど、銀さんは守りたいもののために剣を振るう奴には優しいから。自分が失ってしまった輝きだからこそ、それを未だに持ち続けている人が折られるのは見たくないという心理がはたらくのではないか。『さらば真選組編』のスナックすまいるで、副長としての責任にがんじがらめの土方さんをその想いごと守るために銀さんが自らその拳を受けるところ、あんなの見たら誰でも「超カッケェ……」ってなっちゃうよ。

 『さらば真選組編』は万事屋と真選組の絆をふんだんに見せつけてくる大好きな長編。土方さんがもう一度真選組として戦う決意をするとき銀さんが一緒に扉を開けてくれたことにも燃えたし、敵の船に突入するときに土方さんが足を踏み出した隣から銀さんが現れる演出には鳥肌が立ったし、そのとき土方さんが放った「俺はようやく真選組になれたよ」という言葉への感動は尋常じゃなかった。土方さんが守りたいのは真選組の居場所でもあり万事屋の居場所でもあるなんてことを突きつけられたらもう……胸がいっぱいで何も言えねえ……。

 土方さんも沖田くんに負けず劣らず近藤さんを己の存在の支えにしているから、近藤さんが死んでしまったかのように見えたとき何もかもが失われたような気持ちになって足が止まってしまったところに、銀さんが「戦ェェェ真選組ィィィ!」と発破をかけるのもものすごく良かった。近藤さんが喪われても動けるのは万事屋が部外者だからで、でもただの部外者でないからこそそういう言葉を届けられる。そんで近藤さんが死んでいなかったとわかったときの土方さんの顔!空知先生表情に感情込めるの上手すぎだろ……。

 

・神威くん

 個人への好きというより『洛陽決戦編』のラストの流れが好きすぎてそれ込みの好感度かな(そこでの阿伏兎の行動も含めて)。

 彼が最強にこだわっていたのは単に親父を超えるために見えて、実のところあのとき親父をねじ伏せてでもお母さんを連れ出せなかった己の弱さ(たとえそれがお母さんの意志に反するものでも)や、お母さんが弱っていくのに見ていることしかできなかった己の無力感を打ち払うためでいいのかな? 本当は傷ついているのに傷ついていないふりをして、あらゆるものへの執着を捨て去ってどんな喪失にも傷つかない心をもてるようになれば最強になれると信じたということ?そりゃあ銀魂における「強さ」とは真逆の理屈だわ。それを叩っ斬って「最後までお母さんの死から逃げなかった神楽の方が強い」という結論に行くのがめちゃくちゃ銀魂らしい。

 私は「全てを捨ててしまいたいと投げやりになった人が最後まで捨てられなかった一欠片の想い」が昔から好きなんだけど、『洛陽決戦編』はこのテーマど真ん中に切り込んで来てくれたところがめちゃくちゃ好き。極限の状態の中で生まれた一瞬の迷い、どれだけ言葉や態度で取り繕おうとその「迷った」という事実だけが本当の気持ちを映し出している。自分の本心を正しく理解することは本当はすごく難しいことなのかもしれないと私は日頃から思っているから、こういう風に無意識の現象が先に発生して「ああ、自分ってこう思っていたんだ」と気づく展開が何よりも好き。

 心がとっくに離れているのに家族家族と表面上の体裁だけを整えたがるのは好きではないけど、神威くんの心には家族への想いがちゃんとあったってことだから、彼が強がりを捨てて自分の怖れを認める勇気をもてて本当に良かった。

 それだけでも十分良い話なのに、さらに好きな部分は阿伏兎が「たとえ空っぽでもあんたは俺たちの誇りだった」というシーンね。神威くんあなた全然空っぽなんかじゃないじゃん……!めちゃくちゃ愛されてるじゃん……!阿伏兎が腕もがれるまでされてるのに、文句言うだけでずっと付いてきてくれてたのってそういうことかあ〜と納得。最強に向かってひた走るという夢を見せてくれたからかあ〜。家族の話題には一切干渉してこなかった阿伏兎が、神威くんの夜兎としての誇りが損なわれそうになった途端に割り込んでくるのがものすごく良い。神威くんは家族からは逃げてたかもしれないけど、新しい関係をちゃんと築けている時点でもう十分居場所はできちゃってるじゃないか。『洛陽決戦編』は「兄の自分も海賊の自分もどっちも本当の自分」という結論までがあまりにも美しくて……良すぎる。

 しかし今更だけど神楽ちゃんにとっての万事屋がもうひとつの家族だということがもはや誰にとっても共通認識になっているのがめちゃくちゃいい。それも露骨に銀さんが父親で新八が兄とかではなく、ただただ家族っていうのが本当にいい。新八と神楽ちゃんの間に優劣がなくて運命共同体って感じなのもしみじみと良い。

 

・高杉くん

 銀魂を語る上で絶対に外せない存在。これも彼個人への好きというよりは銀さんとの関係性があまりに良すぎるせい。ラスボス枠でキャラを壊せないから銀さんとは長いことニアミス以上のことは起こらなかったんだけど、『将軍暗殺編』から最終回まで怒涛の絆エピソードを叩きつけられたせいで私はもはや息もできないくらいだった。「俺はまだ破門されてなかったんだな」のシーンを初めて見たときは泣きすぎて大変だったもの。高杉くんの失った左目に最後に映したのが銀さんの泣き顔で!?その光景がずっと頭から離れなくて!?互いに自分を切るよりももっと痛い相手を斬ることで先生の仇を取ろうとしていて!?銀さんが「この世でこいつの気持ちを誰よりも知っているのがこの俺」「こいつを斬るのも護るのもこの俺」って言って!?「俺にはお前が、お前には俺がいる」ってもう男2人としての究極の答えがここにあるんだけど……。

 しかも高杉が銀時を斬る理由は何も銀時が憎いからではなくてむしろその逆、銀時に先生を斬るなんてことを選択させてしまった己へのどうしようもない憤りだったなんて……。実際に先生の命を絶ったのは銀時だけど、そうさせたのは自分が弱かったせいだと。自分たちなんかを護ることを「選ばせてしまった」と高杉はずっと思い続けてきたのか……。そりゃそんな銀時を恨めるわけがないじゃないか。「なぜ俺たちを選んだ」と問いながらも銀時がそうする理由なんて手に取るようにわかるから、責めたい気持ちと責められない気持ちとの板挟みでただ悲しみと怒りと無力感だけが暴れ狂っている状態だったんだ。「お前一人なら先生と共に逃げられたはずだろう」という言葉にどれだけ銀時を買っていたのかが現れているもの。

 2人にとって互いを斬るということはその死までもまるごと背負うということで、「お前を斬った」という罪も含めて全部俺が請け負うからお前は楽になれという意味でもあったと私は思う。憎み合うどころかお互いが大切でしかたないくせに、相手の存在そのものが過去の無力の象徴でもあるから今まで通りの仲間ではいられない、だったらせめて自分の手で斬ることが相手にしてやれる精一杯のことだと思っていたんじゃないか。

 銀魂は2つの勢力が争ってると思ったらもっと大きくて外道な第三勢力が漁夫の利を狙ってきて結果的に最初の2つが共闘する展開が多いから「またそれかい!」と思うこともあったんだけど、一橋公が鬼兵隊を見捨ててくれたことには「本当にありがとう……」と思ってしまった。ぶっちゃけ銀さんと高杉くんが共闘するにはそれしかないからね。数ページとはいえ攘夷四天王の共闘も見られたし、虚との総力戦では地上と宇宙で別れて戦っていたので2人の立場を考えたらこれ以上を望むのは贅沢なのかなと考えていたら最終章でまさかの高杉くんの方から共闘の誘いがあって、あまりに私の望んだ光景すぎて夢見てんのかな?と思ったくらい。憎くて別れたのではないからこそ「ただ、救いに行こうぜ」という単純な言葉が高杉の口から聞ける瞬間をもしかしたら銀さんもずっと待ち望んでいたのではないか。高杉と対峙するのではなく、同じ方向を向いてもう一度共に歩けるという瞬間を。

 それでも高杉くんは事あるごとに銀さんに向かって「お前のあるべき場所はここじゃねえ」みたいなことを言ってくるんだけど、それってつまり銀時が新しい仲間たちと幸せに暮らせることを望んでいるって意味だからね。もう銀時に辛いことは背負わせたくないって言ってるのと同じだから。この漫画ホントにツンデレばっかりだな。それに対する銀さんの「取り戻さなきゃならねえもんなんてもう何もねえよ」という返しに万感の想いが込められていて、もうウワアア〜〜〜!としか言えない。サクラミツツキで言う「欠けた月の半分」って銀さんにとっては高杉くんだったんじゃないのかな。その欠乏を埋められた銀さんはもう……無敵よ。高杉くんが敵を葬るために自分ごとアルタナの渦に飲まれるのを阻止した後の銀さんのまっすぐな目を見たら、「本気で"全部"を守る気なんだな」とわかってしまった。ただ銀さんもそこまでやっておきながら「お前が大事なんだ」とまでは明言できないツンデレだから、「今の仲間」である新八と神楽がたどり着いたのを見届けた高杉くんは本当に満足そうな顔をしながら1人で行ってしまうんだもの。銀さんの守りたい世界は高杉くんがいる所も含めての世界なんだってちゃんと伝わってた!?まあ伝わってたとしても行ってしまうんだろうけどね!?

 しかし虚に変わった高杉を斬る直前に、痛みを堪えるような銀さんの口元を映すのズルすぎるだろォ!?互いを斬るのが一番痛えって言ってんだからそりゃ辛いだろう悲しいだろう……やりたくないだろう……それでも互いに信じるもののため斬らなきゃならねえ、ってもうどんだけ読者を泣かせれば気がすむのかな!?やっぱ空知先生ってすごすぎる……。高杉の左目だけでは飽き足らず右目まで銀時のツラを焼き付けて終わるってそんな……そんなの……ありがとうって言いたい気持ちと言いたくない気持ちで引き裂かれそうになるわ!銀さんが泣きたいほど辛いくせに頑なにそれを気取らせまいとしたのも、高杉が「シケた面してんなよ」と言ったのも全部お互いのためだし……!もうホントお前らというやつは……!

    

『FINAL FANTASY VII REMAKE』感想

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 私は生粋のテイルズ育ちで、日本のRPGとしてはおそらくその一段階上の知名度であろうドラクエやらFFには一切触れてこなかった人間なんだけど(主にキャラデザがピンと来ないという理由で)、好きなゲーム実況者さんがプレイしている動画を見ていたら自分でもやりたくなってしまった。一応いつか自分でもやる可能性があるゲームの動画は見ないようにしてるんだけど、これに関しては本当に興味の射程外だったから初見の衝撃を逃してしまったのは残念だけど仕方がない。それに最近はネタバレを許せない気持ちよりも、期待に叶うだけの物が確実に待っているという保証が欲しいという気持ちが強くなってきているから、知識が先に来て後から体験で補強するというような遊び方もアリなのかなと思うようになった。

 それからこのリメイクはどうやら原作とは異なるストーリー展開に進むような匂わせをしているんだけど、テイルズではその手の新展開を入れたことで元作品の魅力を担っていた重大な部分を捨てるようなことが多くて辟易していたので、FFはその辺りをどう料理してくるのかという興味があった。もし仮にファンから見て改悪と呼べるようなことになったとしても原作に思入れのない私ならノーダメージなのではないかと考えたのもある。

 先があまりに気になったので原作のプレイ動画も見てしまったのだけど、PSのグラフィックと比べると現行機のクオリティはまさに天と地ほどの差があるので「このシーンがリメイクだとどうなるのかめちゃくちゃ見たい」という気持ちがふつふつと湧いてきて、むしろこの衝動が購入に踏み切る決定打になったと言ってもいい。「この時のクラウドはどんな表情なんだろう?」とか「どんな声色でこれを言うんだろう?」とか「他の都市のグラフィックは?」とかが気になってしょうがない。

 それからティファとエアリスだけでなくバレットともデートイベントがあると知ったのがトドメになったね。「クラウドの女装イベントにあれだけ本気だったなら……もしかしてこれもちゃんとやってくれるんじゃないか!?」という期待を抱かずにはいられない。いや個人的には2人の間にそういう感情は発生しないだろと思うけど、現代ゲームなら恋愛イベントだけでなく同性の友達と気兼ねなく遊ぶのも同じくらいイイと言ってくれよという願望がある。まあ日本のゲームにその手の期待をするのは8割くらい見えている地雷なんだけど……。

 

 ここからはゲーム本編の感想

 このゲームのいいところはたくさんあるけど私が一番推せると思うのはやっぱりグラフィックかなあ。特に施設内とか街並みのクオリティが信じられないほど高い。古びた金属の質感がリアルすぎるし、あらゆる物への光の当たり方の再現度がす〜〜ごい。後はキャラクターのモデリングへの気合の入り方が尋常ではなくて、主要キャラクターに100年に一度の超絶美形しかいない。バレットとかビッグスとか非イケメンみたいに言われてるけどクラウドたちが飛び抜けてるだけでそれ以外もほぼハリウッドスターなのよ。まあ一人二人ならともかくあまりに全員が美麗すぎると「そうはならんやろ」と思ってしまって若干引いちゃうところがあるけど……。

 システム面を一言で言うなら、す〜〜ごくプレイヤーに対して親切なゲーム。まさに至れり尽くせりという感じ。チュートリアルも丁寧だしプレイヤーにとって何が快適なのかをしっかり考えて作られている。こんなに優しくしていただいてよろしいんですか!?オートセーブと任意セーブが両方できることに始まり、ボス戦の前にHPMP全回復+買い物スポットを必ず置いてくれていることや、「音を立てずに家を出る」とか「ポンプを2人で操作する」などのミニゲームも3回ほど失敗するほどクリアしやすくしてくれるという風に細かい気遣いが行き届いている。クエストを達成すると依頼主まで瞬時に飛ばしてくれたり、L1長押しで地下通路から地上に一瞬で帰らせてくれることにはかなり感動した。最近アサクリの旧作ばっかりやってたからわからないけど今のゲームってみんなこうなの? ただサムルートとマムルートの差分を回収したいのにチャプターセレクトするとまさかの陥没道路からなのは「マジかこいつ」と思った。結果を見るのに闘技場イベを挟まなきゃならないところも「マジかこいつ」だった。

 後は戦闘がとにかく面白い!私は戦闘苦手なんで当たり前のようにEasyなんだけど、ガチャガチャやっているだけでも楽しくてちゃんと理解できるともっと楽しい。楽に勝てる条件が敵ごとに細かく設定されていて、チャンスをしっかりモノにできたときの爽快感が大きい。でもEasyだと流石にサッサと終わりすぎるかなーと調子に乗ってNormalにしてみたら、一度に考えることが多くてあたふたしてる間にダメージ受けまくり死にまくりで全滅はなんとか免れるけど常に満身創痍状態に陥ることになり、泣く泣くEasyにとんぼ返りした。ATBゲージが無いとアイテムすら使えないので逃げ回っているだけでは追い詰められるばかりなのが難しい。でもそんなゲーム下手人間のために、アクション自動でコマンドだけ選べばいいというClassicモードまで搭載する圧倒的親切。こんなに優しくしていただいてよろしいんですか!?

 

 次にストーリーの話をすると、中盤ぐらいまではアバランチの作戦にクラウドが付いていっている状態だから、主人公とは言うものの微妙に当事者ではないような雰囲気があった。星の命がウンタラとかバレットが度々熱くなってるけどクラウドさんは金がもらえればそれでいいからね。まあ星の命が終わるとか言われてもあんまり想像できないというか我が事としては捉えにくいから、それよりも日々の生活の方が大事と思ってしまうのはわかる。電車の中のシーンで、神羅の社員とはいえ一般人に執拗に絡んで脅す右腕ガトリングでグラサンの男とかいう絵面があまりに悪くて苦笑いするしかなかった。バレットたちもたまに「街より星だろ」とか「犠牲は仕方ない」とか言うけど、それでも自分たちの家族や仲間がその犠牲に含まれていたら憤慨するんだから神羅もそういう感覚でやっているんだろうなと思う。ただバレットが「お前らの不安や悩みは全部俺が背負ってやる」と宣言するところは素直にカッコいいと思った。

 最初は完全なる他人だったクラウドがみんなと共に死線を潜り抜けることでだんだんと仲間としての意識を目覚めさせていくまでの描写が細かくていい。最近のゲームはパーティトップ以外のキャラクターも一緒に歩いてくれて頻繁におしゃべりしてくれるから、困難を共に乗り越えた仲間という説得力が増し増しになっている。

 クラウドはソルジャー自慢をちょいちょい挟んできて基本的にスカしてる態度なんだけど、単に適切な接し方がわからないだけで本当は心優しい奴だとわかる描写が随所に出てくるのでどんどん彼が可愛く見えてくる。「いくつだ?」と聞かれて歳ではなく「クラスファーストだ」とドヤ顔で言い切るシーンには爆笑した。強くお願いされたら断れないところもいい。ハイタッチを嫌ってるのではなくわかってない?っぽくてだんだんと出来るようになっていくのが良すぎる。

 あと外せないのはエアリスとティファに関してか。私はエアリスの見た目は好きだけどあの接続詞のない話し方が結構苦手。なんかスタッフが言葉を覚えたての姪の話し方を参考にしたとか聞いたけど、エアリスの歳は10代後半から20代前半だろうに女児の話し方採用すな。アホに見える。彼女が列車墓場のゴースト騒ぎの時、敵対的ではなさそうとはいえ縁もゆかりもないゴーストに親身になりすぎていて「のんきやな〜〜」とか思ってしまった。この手の博愛キャラって苦手なんだよなあ……。それに加えてストーリー後半になるとパーティー内でエアリスしか知らないことが多すぎるせいで、発する言葉の8割ぐらいが思わせぶりの何を言いたいのかわからないものばかりなことに正直イラついた。暗くなりがちなクラウドやティファを明るく元気づけられるのはいいキャラしてると思うけど……。

 清廉潔白な人よりも内心に弱さを抱えている人の方が私は好き。そういう意味ではティファが予想以上に可愛く見えた。肉体的にはそこらの人より圧倒的にタフだけど精神面では結構ネガティブっていうキャラ付けがいい。戦う時の「邪魔だ!」がありえないほどカッコいいし。バレットとのやり取りも気心の知れた間柄という感じでよかった。内臓入ってんのかな?ってくらい腹が凹んでるのは見るたびにワ〜オと思うし、筋肉ついてるとはいえ腕も細い(それはクラウドもか?)のはやっぱり"ヒロイン"だからなんだろうな〜とか思ってしまう。

 そういう個人的な好みを差っ引いても、クラウドさんがティファを大事に思っているオーラを事あるごとに出してくるから、この2人をくっつけてあげたいという気持ちが湧いてきてしまう。クラウドさん、ティファに対する声だけが他に比べて明らかに優しいもの。ティファが危険なときは一瞬も迷わずにサッと助けて(ついでにバレットもだけど)「大丈夫か?」と言ってしまえるところがあまりにカッコよくて失神するレベル。

 神羅ビル脱出までの流れはほとんど文句という文句が浮かばないくらい楽しかったんだけど、録画禁止区域に入ってから以降の展開にはあんまりノレなかったというか、「未来は自分たちで切り開く!」みたいなセリフにもう食傷すぎて「なんでRPGって毎度毎度こういう感じになってしまうん?」と若干白けてしまった。似たように見えるゲームタイトルたちにも中身にはそれぞれの個性があるのに、なんで終わり方は大抵どこかで見たような感じになってしまうのかな?運命の壁を超える動機も、クラウドは本能的?にセフィロスを打ち負かしたいという衝動がありそうだけど、バレットもティファもほぼエアリスに言われるがまま流れで来たみたいな感じだったし……(というか未来云々言ってるのがほぼエアリスを通してしかわからない情報だから)。しかも運命が変わった結果、原作では死ぬことになった人たちが軒並み生存する(最後のムービーを適当に見ちゃったから気づかなかったけど、他の人の感想を見るにザックスが生存したのは別の世界線?だったっぽい)というのはなんだかな〜〜。個人的に「奇跡が起こって全員生存みんな仲良しハッピーエンド!良かったね〜」的な展開はあんまり好きではないから……。精一杯生きた結果死ぬのはそんなに悪いことかな?好きなキャラが死ぬことにショックを受けるのはあくまでファンの視点であって、お話を作る側の人はストーリー上必要だと思ったから死ぬことにしたんじゃないの?それを覆して尚それより面白くする自信があるの?と疑いを抱いてしまう。

    それとセフィロスクラウド個人に対して何かアドバイスをするような言葉をかけてくるから、ひょっとして今後共闘する展開とかもあり得るのかなあ?と気になった。私は所詮動画で見た程度の知識しかないけど、クラウドに対して「お前を失いたくない」とかそんなこと言うキャラだっけ?「星の真の敵はセフィロス」ってエアリスが言うけど、セフィロスの方も運命の壁を壊したがっているようなそぶりを見せるから敵対する理由がわからなくなる。星を生存させるためならどんな手段でも使う(多くの人間の人生をぶっ壊すことになっても)、みたいな感じなのかな?セフィロスも思わせぶり2号だからほぼ匂わせしか喋らないし。

    もし本当にこの先の展開が原作と全く違うものになるのなら、「あのシーンが今のグラフィックでどんな演出になるか見たい」という私の購入動機は満たされない可能性がある気がしてきた。まあセフィロスの言う通り本当にこの先はわからないのでほどほどに期待しながら待とうと思う。

『Assassin's Creed IV Black Flag』感想

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 ハァ~~終わっちまったなあ!アサシンクリードってやっぱり……いいゲームだな……。流石にここまで短期間に連続でやると飽きが来る部分もあるけど、最後にスタッフロールが流れたときに胸がいっぱいになれるともう細かいこととかどうでもよくなってくる。

 特に海戦は既にローグでまあまあやってしまっていたのもあって飽きが来るのも早かったんだけど、ストーリーを終わらせるだけなら最上級外殻の設計図は要らない程度の難易度調整で本当に助かった。船乗りの歌が心地良すぎるから船旅自体はいつものびのびとした気分で出来たし。シェイがわざわざ海戦をする理由って正直無かったと思うけど、エドワードはそれが生業だから没入感もローグより大きかった。

 その一方でアサシンになったのがゲーム中でもかなり後半だったからか、アサシンとしてのミッションは尾行!尾行!尾行!の嵐であまり面白味はなかったかもしれない。まず街に長居することがないからパルクールの出番がほとんど無かったし。

 

・ストーリーの話

 エドワードはヘイザムにもコナーにも全く似ていない荒くれ者で、やっぱり人格を作るのは血筋より育ち方の面が大きいよなと思った(モーションが同じところが多いのは制作のリソース上の都合だと思う)。彼の行動原理の9割は金のためなので非常にわかりやすい。でもただ豪遊できればいいのではなく、すべては愛するキャロラインに良い暮らしをさせてやりたいからというところが憎めないポイント。女に対しては全体的に妙に優しいし。しかし一獲千金でどうにかしようと思っているところとか、2年経ったら帰るという約束をすっぽかしてもまだ妻をここに呼べるかもと淡い期待を抱いている一途なところがまあ……言いにくいけど「夢見てんな~」ってなるよね。キャロラインはそんなのいらないって言ってるのにまだ「お前のためだ」と譲らないから、そりゃあ別居にもなりますわ。彼女も愛していないわけではないのにこの……すれ違いっぷりね。

 彼、ストーリーの始めからまさかの追い剥ぎする側ですからね(殺る気になったのはさすがに向こうが殺意を向けてきてからだったから正当防衛?なんだけど)。一方でアサシンとしての教育を一切受けていないのにアドリブでアサシンのふりをやり切るという規格外の才能の持ち主。<観測所>というトンデモパワーの存在を知っても自分が利用しようとか一切考えず「金になるぞ!」まっしぐらなのでいっそ清々しい。嘘がばれてとっ捕まった後もその船を奪って自分の物にしてしまうほどのタフさ。コツコツ金をためて正規法で買うよりもこっちの方が遥かに手っ取り早いもんな!

 奪いたいときに奪って飲みたいときに飲んで好きなように面白おかしく暮らせればいいというナッソーの理想も、大国イギリスの圧倒的武力の前では泡のように消えてしまうものでしかないというのがやるせない。というかあれだけ商船を好き勝手沈めてたらそりゃあ取り締まられますわ。”理想郷”も結局人間社会からは逃れられないという……。ホーニゴールドなんかは時勢を読んだ結果イギリスに付いた方がいいと踏んで裏切り者と化してしまったわけだけど、正直それが英断なのはわかるというか、歯向かったところで絞首刑になる未来しかないならそういう奴も出てくるよなあと思って、私はあんまり憎む気持ちにもなれなかったな。サッチもヴェインもラカムもメアリーもその通りに無残に死んでいったし……。散々奪って殺しまくって置きながら自分だけ穏やかな死に方を求めるのは図々しいのもわかるし、思いっきり生きた結果がそれなら仕方ないと思えるのが理想なんだろうけど、実際の惨たらしい死に直面してなおそんな風に吹っ切れるかはまた別の話だよ。サッチは最後に戦って死ねたから本望かもしれないけど、それでも「これからは静かな航海をしたい」と心変わりを語った直後だったから、「あれで本当によかったのか?」とどうしても思ってしまうよ。でもナッソーをほとんど見捨てた形のサッチに対して、エドワードは怒るでもなくただただ残念だという態度だったことに驚いた。「好き勝手生きる」がモットーである以上、去る者に必死になって追いすがろうとは思えなかったのかな。ホーニゴールドはエドワード自身が始末したわけだけど、それはイギリスに仲間たちを売ったからだしちゃっかりテンプル騎士になってやがったせいだからね。裏切りに烈火のごとく怒るのは仲間として信頼していたことの裏返しだと思う。実際私、エドが狂ってしまったヴェインをぶちのめしただけで殺していなかったことに相当驚いたもの。海賊なんて危険な生活をしていたら拠り所になるのなんて仲間くらいだろうから、それを根こそぎ失ってしまったら何のために戦っていたのか見失うのも仕方がない。

 しかしナッソーの代表者が総督に呼びつけられたときにエドワードの名前だけ呼ばれなかったのはなんで!?やっぱ観測所観測所ばっかり言って変わったやつだと思われてたから!?それか影響力のある黒髭たちと親しくしていても本人が統治に一切興味が無かったから、立場としては大したことなかったのかな。観測所にこだわり続けたせいでアドたち船員の心も離れていたみたいな描写が多くあるし。というかアド!いくら呆れていても置いてくって何!?そんなに嫌いだった!?と思ってネットで調べたら「ロバーツの手下に襲われてやむなく」みたいなことが書いてあってなるほどそういうことなら……となったけど、それならそうと言えー!「置いて行ってゴメン」ぐらい言えー!何を爽やかに去って行ってんだ!アドには捨てられるわロバーツには売られるわ監獄にはぶち込まれるわ一番信頼していたと言っていいメアリーも失うわで、ホーニゴールドが死に際に残した言葉「このままだとお前は孤独になる」が実現してしまって、結局どんなに財宝を手に入れてもそれを分かち合う人がいなければ意味がないとエドワードは気づいたんじゃないかなあ。泥酔した彼が見た、おびただしい数の屍が浮いている海の絵面!あれだけ戦って戦って得た物がこれですか?という説得力が尋常じゃなかった。共に過ごした仲間たちがみんないなくなって打ちひしがれているアンとエドワードが寄り添うシーンはすごくよかった。アサシンたちという頼もしい仲間を得たのはよかったけど、愛した海賊たちと生きた記憶と喪失の悲しみはこの2人にしかわからないことだから。余談だけどこの時のアンは目の保養要員とか”俺の女”枠ではなくて人格のあるただの「海賊仲間」だったことが私にとってはすごく嬉しかった。こういうのが多いから私は海外ゲーが好き。

 このゲーム何といってもエピローグが最高でさあ……アンの歌……あんなんダメだよ……泣いちゃうよ……。もうここにいない仲間たちの幻影を見せながら「さらば愛しき仲間たち」て……。しかもその歌に載せてエドが娘さんのために花を摘むシーン!あのクソ雑荒くれおじさんが!娘さんと上手くやれなかったらどうしようとソワソワしている姿を見せられたらもう!滂沱の涙よ!母と自分をずっとほったらかして好き勝手やってた親父が今更父親面してくるのはジェニー的にはどうなんだと思うけどもう頑張れしか言えない。

 今作はアサシンもテンプル騎士も賢者もほぼおまけレベルの関わり方だったけど、ストーリー上しっかりと要点にはなっていて「アサクリらしくはないけどアサクリ」という不思議な塩梅だった。それもたぶん4まで続いてきたからこそ「たまにはこういうのも良いよね!」となれるんだろう。アサクリ初心者に4を薦める人は多いけど、いきなり4からだったらたぶんこうは思えないよ。まあゲーム的面白さを求めている人に1からやれと言うのも酷な話だけど。

 いや~~いいゲームだったなあ。

『Assassin's Creed Rogue Remaster』感想

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    3をやったらアキレスとヘイザムの全盛期についてもっと知りたくなったから、4を飛ばしてローグをやってみたわけだけど、う〜〜ん、正直言って微妙!UIもクエストの導線も確実に親切になっていて遊びやすくはなっていたんだけど、やっぱストーリーが薄味すぎる。主人公が教団から寝返ってアサシンキラーになるのが売りだったけど、リアムたちと暮らした頃のエピソードがほとんどないから感情移入しづらい。リアムとの付き合いがアサシンになる以前の子供の頃からという事実も、データベースの文章上でちょろっと言われるだけだし。プレイヤー(3やってたらだけど)がホームステッドで暮らしたのはコナーとしてだから、それを失う悲しみと言ってもニュアンスが違うんだよ。その代わりにテンプル騎士たちとのエピソードが豊富というわけでもないし。ヘイザムともうちょい仲間っぽいやりとりが見たかったな〜。

 

このアサシンの紋章が

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回転してテンプル騎士団の紋章に変わる演出には痺れた

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ヘイザムが舟に乗ってくれるのは楽しかった

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    そもそもシェイが教団を捨てた理由は「先駆者の秘宝を抜き取れば大地震が起こることをアキレスは知っていてそうしたんだ」というものだったけど、ハイチの時点だと一度目だから地震との関連性にまだ半信半疑でも仕方なくないか?と思ってしまった。2回連続で地震が起こった後もまだ秘宝を求め続けるようならそりゃあおかしいと思うけど。それだけでシェイがいきなりアサシン全否定に走るのは早合点すぎるというか、そこに至る前に「あのアキレスがそんなまさか……」みたいに悩むシーンがないと彼の感情の変化に着いていけなくて、もう一回話し合った方がいいんじゃない?という疑念が消えなかった。実際ラストシークエンスでのアキレスはシェイの考えを理解してくれていたし。でもリアムが、主張の正しさよりも自分たちを裏切ったかどうかしか見なかったことにはガッカリしたわ。頭がいい奴だと思ってたのに!頭が固いだけかよ!シェイとは幼馴染で親友かもしれないけど私は彼を殺したことでむしろせいせいしてしまった。

    しかし教団に対して何の疑いを持っていない頃のシェイはテンプル騎士を犬呼ばわりするぐらい見下していたのに、今度は自分がその忠犬になるなんて変わり身が早すぎないか?と思ってしまうところがあった。一番最初に出会った騎士がジョージ・モンローさんという非の打ち所のない聖人だったせいもあるかもしれないけど。ヘイザムだって決して"良い人"ではないし、チャールズ・リーとか見てもなおソレを言えますか?みたいなことを思ってしまったね。「アサシンの迎撃」ミッションとかどう考えても秘宝に関係ない一般の任務まで邪魔するほど、シェイがアサシン全体を憎む理由にはあの決別は弱すぎたと思うし、それで今度は騎士団に全幅の信頼を置いてしまったら0か100でしかないじゃない。なんか納得できねえな〜という気持ちが最後まで晴れなかった。

    あとギャングの旗にアサシンマークが入っているってことの説明がなくて、街を荒廃させ市民の家に押し入って暴力を振るうことを教団が容認していることになるけどそれはいいの!?という疑念もあり続けたし、結局アサシンが毒ガスを市民に使うつもりだった疑惑はどうなったの!?とかいろいろ描写が足らなくて不完全燃焼なことばかりだったし。

 海戦にはそこまで興味ないと思っていたけどいざ始めてみると意外に楽しんでる自分がいたから、4も好き嫌いせずにやってみようかな。   

 

ファッションとインテリアのセンスは間違いなくテンプルの方が上

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何だかんだ騎士のレリックとか

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ジェームズ・ガンの十字架とかコンプするほどは遊んだんだけどね

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